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ハウスクリーニング・家事代行・整理収納

都道府県愛知県 年代30代 業種家事代行
 株式会社アクションパワー
[ 代表取締役 ]
大津 たまみ さん

大津たまみさんは自身の苦労と経験を生かし、「働く女性を応援したい」と家事や掃除の代行業で起業。子どもたちの判断力や決断力を養うセミナー開催や教材の販売にも着手。掃除を軸にした世界が広がっています。

起業したとき

仕事の経験
結婚
子ども
生かした していなかった いた

プロフィール

掃除会社に勤務した後、夫が起業したビルメンテナンスの会社で、事務や現場作業、経営マネジメントに携わるが、夫との離婚が決まり、退職。就職活動をするが、幼い子どもを抱えていることを理由に不採用が続き、就職を断念する。それならばと起業を決意。半年間の準備を経て、2006年、株式会社アクションパワーを設立。日曜日は息子との時間を最優先するなど、オン・オフをしっかり分け、働く女性たちを応援する事業を満喫している。

起業年表

年齢 西暦 主な活動
19歳
1989年
スイミングのインストラクターを開始 
21歳 1991年 インストラクターをするかたわら、清掃会社にアルバイトとして勤務 
25歳 1995年 結婚 
26歳 1997年 第1子を出産 
27歳 1998年 夫がビルメンテナンス会社で起業し、その会社の事務や現場作業、経営マネジメントに携わる 
34歳 2005年 夫の会社を退職 
35歳 2006年 離婚。株式会社アクションパワーを設立 
37歳 2008年 子ども向け掃除・片付け教材「子どもが賢くなる おそうじ・おかたづけ 入門編」の販売を開始 

起業ストーリー

働く女性の応援団として、「キレイ」で笑顔を届ける

株式会社アクションパワー。大津たまみさんが自身の会社に付けた社名で「行動を起こす力」という意味です。家事や掃除の代行会社とは一見わからないこの社名には、実はふたつの想いが込められています。「自分や会社が動くことで、お客さまやスタッフ、働く女性たちの行動を起こす力になりたい、という想い。そして、もうひとつは自らに対して行動を起こすことをやめないという宣言です」。また大津さんは、単なる家事・清掃代行会社ではなく、「笑顔を届ける」会社なのだと強調します。「キレイになると、気持ちもすっきりするし、笑顔になる。だから、私はキレイにする仕事ではなく、女性に笑顔を届ける仕事なのだと。そう誇りに思っています」。

女性に笑顔を提供して、女性を応援する会社。そこには、これまでの経験がベースにあります。大津さんは夫が経営するビルメンテナンス会社を手伝っていましたが、価値観の相違により退職し、離婚。幼い子どもを抱えていたため、すぐにでも職に付き、安定した生活を送らなくてはと、就職活動を開始します。「10社以上に履歴書を送りましたが、面接まで行けたのはたった2社でした。でも、両親が遠方にいたため、息子の面倒を代わってもらうのは難しく、面接で『もし、子どもの体調が悪くなった時、どうするんですか?』『休日出勤や夜遅くまでの勤務は大丈夫ですか?』と聞かれても、何も返答することができませんでした」。結果、すべて不採用。前年度の額面上の役員報酬が高額だったことから生活保護は受けられないうえに、毎月高額な保険料や住民税がのしかかり、切迫した状況に追い込まれました。「起業しかない。そう決断しました」。

それまで、大津さんは異業種交流会を開いたりしていたことから、マーケティングや人材研修の事業で起業しようと考え、事業計画書を作成し、先輩起業家に見てもらいます。ところが、その先輩に「ここにはあなたの“できる”がひとつも書かれていない」と一喝されてしまいます。「“できる”と思い込んでいただけの自分に気づかせてもらい、ハッとしました。そこからは自分の棚卸しです。自分には何ができるんだろう? 何がしたいんだろう? それを考えていったら、気づいたんです。私は女性たちに働く場を提供したり、働く女性を応援したいんだと」。大津さん自身が一番苦労したこと。それが大津さんにとっての一番やりたいことだったのです。「ずっと掃除関連の仕事に携わってきた自分ができることといえば、やっぱり掃除することだと、原点に立ち返りました。ただ、元夫と競合してお客さまを奪ってしまうようなことだけはしたくありませんでした。家事代行やハウスクリーニングであれば競合せず、かつ働く女性たちを応援できる、と思いました」。

自分を棚卸して事業計画書を作成し、60人以上の人にプレゼン

大津さんはハウスクリーニングと家事代行を事業に、再度、事業計画書を作成します。そして、異業種の先輩起業家や友人に、計画書を見せて自分のやりたいことをプレゼンテーションしていきます。「結果、60人以上の人にプレゼンしました。人に話すことで、自分の想いがどんどん明確になっていくことを実感しましたし、アドバイスによって事業計画も実現性の高い内容にブラッシュアップしていきました」。また、自分には営業力が足りないと思ったので「営業の天才」と評判の先輩について営業活動の技を勉強しました。SNS(ソーシャル・ネットワーキングサービス)を活用して、近隣で行っているハウスクリーニング業の人と出会い、掃除の現場作業を無償で手伝うことで実地を学習。自治体が行う起業支援制度もフルに活用し、退職から半年後の2006年7月に起業しました。知人の紹介などを通じて、ハウスクリーニングや家事代行の仕事はすぐさま入ってくるようになりました。しかし、大津さんの事業計画はそこだけにはとどまっていませんでした。

「整理収納コーディネーター」などのライセンス取得セミナーの開催や子ども向け掃除・片付けの教材「子どもが賢くなる おそうじ・おかたづけ 入門編」の販売も構想。それを実現するには自身でライセンスを取得したり、最新の業界情報を得るために上京して学ぶなど、連続した投資が伴いました。「あっという間に資金がなくなりました。しかし、仲間や先輩の起業家にはそれを打ち明けることができませんでした。事業がうまくいっている顔をずっとしてきたんです」。しかし、どんどんやつれ、顔色も悪くなっていく様子を家族は見逃しませんでした。母親は大津さんに事業がどうなっているのかも聞かず、「信じているからね」とお金を貸してくれました。姉は大手出版社勤務という安定を捨て、大津さんの会社の社員として入ってくれたのです。「本当にありがたかったです。ここまで支えてくれる人のためにもがんばらなくてはと、私は賭けに出ました」。母親からの資金を効果的に使おうと、ワンルームのコーポから移転。ライセンスセミナー開催に必要なスペースがあり、アクセスの良い場所にオフィスを構えます。これが英断でした。構想どおり、ライセンスセミナーを開催できるようになったほか、一般の人や子どもを対象にした整理整頓セミナーなども開催できるようになったのです。「起業から2年かかって、やっと少しは落ち着いたと言えるようになりました」。

次の大きな夢を実現するために、地盤固めをしっかりと

2008年夏、大津さんの会社は個人営業に近しい体制から脱皮し、少しずつ企業体という組織への転換期を迎えようとしていました。それを肌で感じ取っていた大津さんは、企業体らしいルールづくりを始めます。「内部の反発は大きかったです。スタッフは主婦をアルバイトで採用していたのですが、それまで馴れ合いがあったので、ルールによって縛られることに批判が出ました。忙しい最中でしたので、私もスタッフの気持ちをうまくくみ取ることができず、コミュニケーションギャップも生じてしまい、ケンカ別れのように辞めていってしまったスタッフもいました」。そんな起業家としての経験の浅さからくる苦い経験も乗り越え、その後は新しく構築したメンバーとともに団結。女性たちによって、女性たちを応援するアクションとパワーが、企業というひとつの結晶となっていきます。

2008年12月には、念願だった親子でできる子ども向け掃除・片付け教材「子どもが賢くなる おそうじ・おかたづけ 入門編」の販売をスタート。しかし、まだまだ大津さんの夢は広がるばかりです。「オーガニック洗剤の販売、学校や子育てサークルによるお掃除セミナーの開催、ワーキングマザーの積極採用……」。それらを実現させるためにはすぐ着手せず、「次の大きなことをする際に倒れてしまわないよう、今は地盤を固める時期です」と言える冷静さと決断力も身につけました。休息することがなかなか上手くできず、すぐ仕事をしてしまうタイプだという大津さんですが、日曜日だけは我が子との時間を最優先にしています。そんな息子は大津さんのことを、こう言っているそうです。「母さんみたいに、大好きなことで僕も起業したい!」。その言葉は全力、全身で大好きな仕事に取り組む母親の背中を、しっかりと見て育っている証ではないでしょうか。「お母さんは、今日も本気で生きてくるからね」。大津さんがそう言って出かける先には、女性たちの笑顔が待っているのです。

会社概要

会社(団体)名 株式会社アクションパワー
URL http://www.action-power.net/
設立 2006年7月3日
業務内容 家事代行・ハウスクリーニング・整理整頓サービスなど

(大津 たまみさんの場合)

起業のきっかけ、動機

離婚をすることが決定し、夫と経営していた会社を退職することになりました。その後、働く場を求めて数々の会社の面接を受けましたが、子どもが小さいことや両親が遠方にいることなどを理由に就職はかないませんでした。子どもを抱えて女手ひとつで育てるための就職の厳しさを身にしみて実感し、それならば起業しかないと思いました。そこで、これまでの経験を生かし、「女性が働きやすい職場」の提供がしたいと考え、現在の事業で起業しました。

起業までに準備したこと

起業を決めた時に自分にないのは営業力だと思い、異業種交流会で知り合った営業の天才と言われる先輩に頼み込んで、かばん持ちを経験しました。同業他社に頼み込み、清掃方法の現場経験を無償で手伝わせてもらったこともあります。また、事業計画書を作成し、異業種で活躍される60人の経営者などに見せながら、自分の事業に懸ける想いをプレゼンテーションしました。それにより、自分の想いも明確になりましたし、先輩たちからのアドバイスにより、事業もブラッシュアップしていきました。

起業時に一番苦労したこと

何といっても、お金がなかったことです。就職を断念して起業することになったので、起業のために貯蓄していなかったからです。そこで、保険を解約したり、身の回りの服やバッグなどを質屋やリサイクルショップに売って資金に変えました。

だからうまく起業できた!…その一番の理由

起業する際にお金がなかったことで大変な思いもしましたが、お金がないことがプレッシャーになり、起業するしかないと強く背中を押した結果にもなったと思います。貯蓄がもしたくさんあったら、起業という発想にはつながらなかったかもしれませんし、しっかりした事業を考える努力や、お金がないならないなりに知恵を絞る努力もしなかったかもしれません。また、周囲の多くの方の助けも、起業できた理由のひとつです。感謝してもしきれません。

起業時の環境(友人や家族の協力他)

母親は大反対でした。離婚したばかりで精神状態もよくない状態でしたから、これ以上、がんばって自分を苦しめる必要はないんじゃないかと心配していました。姉は応援してくれましたが、やはり心配が大きかったようです。息子に関してはまだ小学3年生だったので、状況がよく読み込めない感じでした。

最初のお客さんと営業方法

友人です。私が自宅に来てやってくれるなら、と共感して仕事をくれました。その後も、口コミで広がっていきました。最初に、自分には営業力が足りないと営業に関して勉強したのですが、結果、これまで営業活動らしい営業はしないまま、紹介の紹介……といった感じで仕事をもらっています。

起業の際の重要ポイント

コミュニケーション能力が重要ではないでしょうか。伝えること、聞くこと、両方必要だと思います。私は事業計画書を60人以上の経営者などに見せてプレゼンテーションしていきましたが、それにより事業をブラッシュアップして理念が明確になったことはもとより、どう伝えるべきか、どう受け止めるべきかといったコミュニケーション能力も非常に勉強になったと思っています。経営者はお客さま、スタッフなどコミュニケーションを重要視されるシーンが多いので、この能力はぜひ磨いたほうがいいと思います。

役に立った情報源や相談先

「創業プラザあいち」では、起業に有利な情報をもらったり、中小企業診断士の方に相談したり、インキュベーション施設を起業準備室として借りたりと、お世話になりました。また、友人で女性起業家の社会保険労務士や新聞社に勤める知人、起業家取材などを行う起業に関するスペシャリストの方、交流会などで知り合った異業種の経営者の方など、本当に多くの方に相談しています。

開業資金

300万円です。ハウスクリーニング士などの資格取得費や掃除に使う洗剤などの材料費などに使い、残りは運転資金に回しました。

活動拠点(事務所・店など)

名古屋市中村区にあるオフィスです。起業準備期間は先輩女性起業家のオフィスの一角を間借りていました。事業開始時はワンルームの古いコーポの一室からスタートさせました。そして事業を軌道に乗せるにはセミナーを開催する必要を感じ、そのスペース確保のために現在の名古屋駅前にあるオフィスに移転しました。

起業時の管理体制の整備(税理士、弁護士、弁理士など)

自分が不得手なことは人に任せて、自分のできることに全力投球するのが私の考え方です。ですから、起業当初から経営コンサルタントや税理士でもある財務コンサルタント、WEBコンサルタントなど、力を補完してくれる人に依頼しました。

起業後の転機

お客さまからの信頼を得るためにハウスクリーニング士2級や整理収納アドバイザー1級などの資格を取ったり、最新の業界情報を手に入れるために東京に出張をしたりと投資が続き、それによって運転資金がなくなってしまった時です。それでも、私は周囲に事業が「うまくいっているか」と聞かれれば「うまくいっている」と応えていたのですが、身内は私の変化を見逃しませんでした。事業がうまくいっていないことを察した母親は資金を貸してくれ、大手出版社に勤めていた姉は、その安定した立場を捨て、私の会社に入ってくれました。これにより、セミナー事業が軌道に乗り、廃業を免れる結果となりました。

起業して自分が成長したと感じたこと

これも転機のひとつと言えるかもしれませんが、法人格はあるものの、やっていることは個人事業と変わらないスタイルから、会社という組織に転換させた時は、成長せざるを得ないと感じました。内部のスタッフの反発も大きく、コミュニケーションギャップも生じて今考えると反省することも多々あります。また、以前に比べて自分自身を許すことができるようになったこと、自分の回りにいてくれる仲間に対して心から感謝することができるようになったと実感します。

起業を志す人への一言アドバイス

自分の頭の中だけで考えず、動いてみることは、とても大事だと思います。人に自分のやりたいことを言うと、目の前の景色が変わります。「じゃあ、こうしてみたら?」「こんなアイデアがあるよ」「こんな人がいるから紹介するよ」と必ず誰かが手を差し伸べてくれるはずです。けれども自分が動かないと、人はどう手を差し伸べればいいのかわかりません。やりたいと思ったら、まず動くこと。ここから起業の一歩は始まります。

気分転換のしかた

息子とゆっくりご飯を食べることと、大きな声で笑うことです。私は今やっている仕事が大好きなので、ヒマさえあれば仕事をしようとして休息を取る努力を怠りがちです。ですから、スタッフに休息を無理やりつくってもらったり、日曜日は息子と過ごす時間だと決めて、仕事をしないようにしています。

その他伝えたいことなど

私は起業する際、資金がなかったので、身の回りのものを売って資金に変えたり、自治体の支援制度を活用したりと、小資本で起業できるよう知恵を絞っていきました。資金があると、そういった創意工夫を怠りがちになります。資金はないよりはあったほうがいいですが、クリアするのが難しそうな壁にぶつかった時に、どうやって知恵を絞って解決するかが、起業家の腕の見せどころでもあります。その知恵を絞る努力は惜しまず行ってください。

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