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多言語にわたる翻訳・通訳・語学教育サービス

都道府県福島県 年代40代 業種国際交流
 有限会社チャイナックス
[ 代表取締役 ]
伊藤 由美 さん

「やりたい仕事はだれも与えてくれない、自分で創り出すしかない」と、得意の中国語を生かして40歳で起業した伊藤由美さん。自身の性格を「飽きっぽい」といいながらも、中国への思いを持ち続け、有限会社チャイナックスを立ち上げました。

起業したとき

仕事の経験
結婚
子ども
生かした していた いた

プロフィール

大学を卒業後、大手クレジット会社に就職したものの、OLを続けていくことに疑問を感じ、退職して語学留学のため中国へ。その後も働きながら大学院で中国の言語文化の修士課程を履修したり、大学で中国語の非常勤講師をしたり、中国と関わり続ける。家族で1年間中国に滞在した際にも、様々な資格を取得して、キャリアを積み重ね、40歳のときに語学、茶芸師の資格を生かして、起業。2004年に有限会社チャイナックスとして法人化。2人の娘の母でもある。

起業年表

年齢 西暦 主な活動
22歳
1984年
大学卒業後、大手クレジット会社へ就職 
24歳 1986年 クレジット会社を退職し、中国へ2年間の語学留学 
27歳 1989年 宮城県内の自治体に就職 
29歳 1991年 結婚(宮城県と福島県(夫)の遠距離結婚) 
34歳 1996年 妊娠を機に自治体を退職し、夫と同居。大学の非常勤講師となる。第1子を出産 
36歳 1998年 第2子を出産 
39歳 2001年 夫の仕事の関係で一家で中国へ行き1年間過ごす。その間に、茶芸師(*1)、点心師(*2)の資格を取得。HSK(漢語水平考試)(*3)高等10級に合格 
40歳 2002年 語学と茶芸師の資格を生かし起業。福島県起業支援室に入居 
42歳 2004年 「有限会社チャイナックス」として法人化 

起業ストーリー

中国語のキャリアを生かして、外国人にも住みよい街づくりを

大学卒業後、OL生活をしていた伊藤由美さんは、このままOLを続けていくことに疑問を感じ、2年で退職し、大学時代に出会った中国語を学ぶために、2年間の語学留学を果たします。中国に関わる仕事をしていきたいと思うようになったのもそのころからでした。帰国後は語学力を生かし、宮城県内の自治体のイベントに通訳として参加。それが縁で自治体の職員となり、7年間を過ごします。その間に、遠距離結婚をし、大学院の修士課程で中国の言語文化について履修。自治体の仕事を続けながら、将来を見据えて、今何ができるかをつねに考えて行動していたといいます。しかし、妊娠を機に自治体を退職し、ご主人の住む福島へ移り住みます。妊娠中から中国語の非常勤講師として働きはじめ、出産。2年後には2人目も生まれ、子育てをしながらいくつかの講師をかけもちでしていました。「講師の仕事は好きですが、非常勤なので安定しているわけではなく、このまま続けていくことに不安もありました」という伊藤さん。何かをやらなければ…という思いが徐々に強くなっていきました。

中国で過ごした1年間に起業に役立つ資格を取得

そんなとき、夫の仕事の都合で1年間を中国で過ごすことになります。このときがまさに伊藤さんにとっての転機。思い立ったら即行動に移してしまう、いい出したらとまらないという性格をよくご存知のご主人は、中国で生活する1年間にいろいろな資格をとりたいという伊藤さんの希望を受け入れてくれました。それから伊藤さんの目が回るほど忙しい生活が始まります。朝、幼稚園に2人の子どもたちを送り出したあと、午前8時から夕方5時まで茶芸師(*1)の資格が取得できる職業訓練センターへ通い、夕方6時から8時半までは、点心師(*2)になるための夜間高校に通いました。「夫が家で仕事をしていたため、子どものお迎えから食事の世話までほとんどやってくれたからできたことです。感謝しています」。
伊藤さんがこっそり教えてくれたプチ自慢は、茶芸師の訓練センターでも点心師の学校でも、地元の中国人より優秀な成績を修めたということです。その他にも、中国語の能力検定HSK(漢語水平考試)(*3)で高等10級に合格しているのですから、1年間で起業に役立つ資格を取得したいという伊藤さんの熱意と努力がうかがえます。

中国茶メインから国際交流をメインに切り替え法人化

2002年、ついに語学と茶芸師の資格を生かし起業します。まず、福島県商工会連合会が行っていた「女性のための起業塾」に参加し、福島県起業支援室(福島コラッセインキュベートルーム)に入居しました。このインキュベートルームは、県の起業家支援事業の一環で、安い賃料で場所を提供してくれて、起業に役立つノウハウを学ぶことができる施設です。ほかの起業家の卵と、様々な意見や情報を交換することができるし、そこには相談役のマネージャーもいました。当初は、中国茶の教室やイベントで中国茶を販売するかたわら、中国語の通訳、翻訳をするという2本立てでスタートしました。「マネージャーや中小企業診断士の方からの、中国茶での起業は難しいという忠告も聞かずに突っ走ってしまいました」
やがて、小売が苦手だったことに気づいた伊藤さんは、マネージャーからアドバイスを受け、語学をメインにして法人化に踏み切り「有限会社チャイナックス」が誕生します。

留学時代や非常勤講師を勤めてきた中で知り合ったネットワークを利用して、中国語のみならず、英語、韓国語の通訳、翻訳、語学教育サービスを本格的に始めます。「ちょうど小泉元首相が観光立国を宣言し、外国人誘致に乗り出したころでした。それなのに、観光地の案内板は日本語のみというところが多くありました」。自治体の支援も受け、観光業界へのアプローチを開始します。観光地や旅館、ホテル、公共施設などさまざまな場所で使える英語、中国語、韓国語で表示された多言語の案内板を作成。さらに改良を進めて、弱視者にもわかりやすいユニバーサルデザインに配慮した「多言語UDシート」は、「福島県新商品生産による新事業分野開拓者認定制度」の認定商品となります。また、海外からの観光客を迎えるホテル、旅館、土産物店に向けたおもてなしの心を伝える多言語会話レッスンの教材を制作。観光協会とのパイプもでき、これからが期待される会社となりました。

「まだまだ軌道に乗ったとはいえない状態ですが、これからも世の中の流れの中で何が必要か、自分に何ができるのかを形にして提案していきたい」と伊藤さん。年齢や性別、身体的特徴、使用言語の違いに関わらず、情報の内容が十分に理解できるように伝え方をデザインすることを「コミュニケーションにおけるユニバーサルデザイン」と称して、さまざまな商品やサービスを提供していくことをライフワークにしたいと語ってくれました。「日本語がわからないばかりに、損をしたり、危険な目に合う外国人が多くいます。その人たちにもきちんと情報が提供できるようにして、外国人にとっても居心地のよい街づくりを、福島県から提案したいんです」。夢を形にするため、伊藤さんの挑戦は続きます。

*1 茶芸師…中国政府公認の中国茶に関する国家職業資格。
*2 点心師…点心を専門に作る料理人で、中国の国家資格。
*3 HSK(漢語水平考試)…中国語を母国語としない人のための国家試験。「漢語水平考試」の発音(Hanyu Shuiping Kaoshi)の頭文字の略称。基礎(1〜3級)、初中等(3〜8級)、高等(9級〜11級)がある。

会社概要

会社(団体)名 有限会社チャイナックス
URL http://chinax.jp
創業 2002年9月15日
設立 2004年3月15日
業務内容 ビジネス多言語サポート事業

(伊藤 由美さんの場合)

起業のきっかけ、動機

OLや自治体職員、非常勤講師などをして20年近く働いてきたことから気づいた自分の性格は、「いわれた仕事をするのが嫌い」ということでした。また、常に現状に満足できず、「やりたい仕事はだれも与えてくれないので自分で創り出すしかない。キャリアを生かした仕事がしたい」と思っていました。40歳を目前に漠然とした焦りもあったように思います。

起業までに準備したこと

中国茶の講座や販売をメインに考えていましたから、中国に滞在中に中国茶のショップと交渉して輸入ルートを確立させました。また、起業については、「女性のための起業塾」という起業セミナーに参加しました。そこで、起業の際必要になる書類の揃え方や顧客づくり、経営理念などのノウハウを教えてもらいました。

起業時に一番苦労したこと

中国茶の輸入ルートが確立していたこともあり、起業すればすぐに輸入販売が可能だと思っていたんです。でも実際は、輸入届を提出したり、食品審査を受けたり、様々な手続きがありました。事前に調べておけばよかったことですが、始めてからわかることも多く、苦労しました。あとは、法人になるときに定款を作成したり、法務局への書類提出などをすべて自分で行ったので、大変でした。

だからうまく起業できた!…その一番の理由

福島県起業支援室(福島コラッセインキュベートルーム)に入居したことは、すごくプラスでした。建物内に県や市の部署があったり、商工会議所があったので、いろいろな情報が入ってくる環境でした。法人化するときの書類の揃え方なども細かく教えてもらえたので、ひとりでもできたのだと思います。

起業時の環境(友人や家族の協力他)

福島県起業支援室のマネージャーや入居の仲間が相談に乗ってくれて、様々なアドバイスをしてくれました。ひとりではないと思えたことはすごく励みになりました。また、家族が理解してくれたことも大きかったと思います。夫は私の性格を十分に理解してくれていたので、反対はしませんでした(きっと反対しても聞かないとわかっていたからだと思いますが)。

最初のお客さんと営業方法

起業当初、公民館などを利用して中国茶の講座を開いたあと、即売という形で販売もしていましたので、最初のお客様は講座に参加してくれた一般の方々でした。小売りや営業の経験がなかったので、ちょっと強引な売り方だったかもしれません。

起業の際の重要ポイント

事前にできる準備はしておいたほうがいい、と反省を込めて思います。あと、起業セミナーなど体験談を聞ける機会があったら、参加してみるべきです。役に立つ情報やアドバイスがもらえるのでおすすめです。私自身、はじめて参加した起業セミナーで教えられた経営理念ともいうべき「5つのものさし」を今でも机の脇に貼っています。それは、「お客様の声をよく聞く」「商品を売らないで価値を売る」「外に求めるのではなく、自分に求める」「結果優先ではなく、原因優先」「部分観ではなく、全体観」ということ。営業がうまくいかないときなど、読み返して心に刻んでいます。

役に立った情報源や相談先

やはり福島県起業支援室に入居したことが一番です。様々な相談を受けてくれる人もいましたし、建物内に商工会議所などもありましたから、地域の情報が入ってきやすい環境でした。そこで、中国茶の講座を開いてもらったり、公民館などのイベントに参加させてもらったりもしました。その他には、法人化する際に、インターネットでいろいろなサイトをチェックしました。

開業資金

入居していた福島県起業支援室での家賃は、毎月1万円でした。その他、講座を開いたり、小売りのための準備などで20万くらいで開業しました。

活動拠点(事務所・店など)

起業当初は、福島県起業支援室の小さなスペースを事務所としていました。ただ、そこは2年間しか借りられないこともあり、ちょうどいい物件を見つけたので、1年半後に現在の場所に移転しました。中国茶の販売も続けていますので、駅に近い大きな道路に面した1階を店舗兼事務所としています。

起業時の管理体制の整備(税理士、弁護士、弁理士など)

申請書類の作成や経理などすべて自分でやりました。今でも自分でやっています。

起業後の転機

起業当初は中国茶の販売を中心にしていましたが、自分が小売に向いていないことに気づかされました。起業支援室のマネージャーや中小企業診断士の方にも、語学中心にしたほうがよいと勧められ、徐々に方向転換しました。小泉元首相が観光立国を宣言し、外国人観光客誘致を開始したのにあわせて、観光業界への多言語サポートサービスをはじめたときが、転機といえば転機かと思います(でも、転機といえるほどの実績はまだまだなのです)。

起業して自分が成長したと感じたこと

営業経験がなかったこともあり、はじめはうまく営業ができなくて、断られては落ち込んでいました。相手のことを考えていなくて、まさに押し売りだったのです。最近は、そういうことも減りました。成功例は少ないですが、企画を練って、プレゼンをして、仕事を得たときの喜びは格別です。そんなとき、自分も成長したんだなと感じます。

起業を志す人への一言アドバイス

どんなに反対されても負けない強い信念、情熱がないと起業し、続けていくことは難しいかもしれません。「自分にしかできないことがある」、「自分を必要とする人がきっといる」と信じて、勇気を出して「はじめの一歩」を踏み出してください。

気分転換のしかた

子どもたちとは、いろいろなことを話します。学校のことや友だちの話を聞いたり、私の仕事のことも聞いてもらったり……。そんな時間が一番の気分転換ですね。家事や育児、地域の役員をしたりと忙しい毎日ですが、そういったことがあるからこそ、仕事とのバランスがとれている気がします。

その他伝えたいことなど

一歩踏み出すことは大変ですが、それはその気にさえなれば意外と容易です。本当の試練は起業してからで、歩み続けることのほうがずっと多難です。起業して4年が経ちましたが、まだまだ経営は安定していません。起業前にもっと事業計画を練っておくべきだったと思います。
私が心がけていることは、「誠実に、手を抜かず、心を込めて仕事をする」、「仕事を通して社会貢献する」、「社会に求められているのは何かをつねに考える」、「信頼される自分になる」、「子どもの見本となるかっこいいおとなになる」です。起業を志す人なら当てはまることがあるかもしれませんね。


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