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バイオ苗の研究開発・生産・販売

都道府県徳島県 年代40代 業種農林・水産
 有限会社新居バイオ花き研究所 
[ 代表取締役 ]
新居 洋子 さん

洋らんをはじめ、農家向けのバイオ苗を開発・生産・販売している新居洋子さん。きっかけは、洋らん栽培をしていた夫からの希望と、薬剤師として身につけていた薬学の知識でした。

起業したとき

仕事の経験
結婚
子ども
生かした していた いた

プロフィール

徳島文理大学薬学部卒業。病院内薬局での勤務を経て、夫の洋らん栽培を手伝うようになる。1989年にバイオテクノロジーの研究開発を始め、その後右肩上がりで成長。規模拡大のために1996年、有限会社新居バイオ花き研究所を設立、代表取締役に就任。現在は、洋らん、鳴門金時、イチゴを中心に取り扱いながら、新商品の研究にも取り組んでいる。4児の母でもある。

起業年表

年齢 西暦 主な活動
22歳
1976年
徳島文理大学薬学部卒業 
23歳 1977年 由岐病院薬局勤務 
27歳 1981年 結婚 
28歳 1982年 第1子出産 
29歳 1983年 退職。第2子出産。夫の洋らん栽培の手伝いを始める 
35歳 1989年 バイオテクノロジーの研究を開始する 
36歳 1990年 第3子出産 
38歳 1992年 第4子出産 
42歳 1996年 農林金融公庫からの融資を受けて研究棟を改築する。有限会社新居バイオ花き研究所、設立。代表取締役就任 
43歳 1997年 洋らんの他、草花、鳴門金時などの野菜のメリクロン苗(*起業ストーリー下参照)に着手 
45歳 1999年 第27回毎日農業記録賞特別賞を受賞 
49歳 2003年 農林水産省優良認定農業者として表彰される 
51歳 2005年 新品種「恋苺」を発表。徳島ニュービジネス支援賞優秀賞を受賞 
53歳 2007年 培養施設として、片山新社屋を増設 

起業ストーリー

夫の希望と薬学の知識で始まったバイオテクノロジー研究

出産を機に病院薬局勤務を退職した新居洋子さん。夫が個人事業農家向けに行っていた洋らん栽培の手伝いをしながら、子育てをしていました。
そんな日々の転機となったのは、バイオテクノロジーの研究をしてほしいという夫からの希望でした。バイオテクノロジーを使うと、強くて栽培しやすい苗を作ることができるため、栽培していた洋らんだけでなく、その苗を農家に売ることができるのです。夫も勉強をしていましたが、栽培の忙しさで中断していたのです。
そこで、1989年、新居さんは身につけている薬学の知識を生かして、子育てと並行して研究を始めることにしました。まずは自宅2階の六畳間を改造して研究をスタート。3年後には自宅の裏庭にバイオ室を設けてバイオテクノロジーの基礎研究に取り組みました。
夫が営業、妻が研究。まさに二人三脚の事業です。夫は新聞や雑誌の掲載をみた方からの問い合わせに対応したり、 “お客様の困り事なんでも相談受け付けます”と年に2〜3回、車で北海道から九州、鹿児島まで訪問したり、地道な営業活動をしてきました。努力の結果、顧客からの口コミも増え、信頼関係もできて、だんだんと新居さんが作ったバイオ苗を買ってくれる顧客が増えていきました。

研究棟の建設、そして法人化

新居さんの研究が進み、1996年には農家からの注文も増え、年商約3000万円にまでなりました。手狭になってきたバイオ室を、研究棟として改築することを希望していた新居さんは、5000万円の融資を農林金融公庫に相談。しかし、とても難航しました。家族が土地を担保にしてくれましたが、中山間地域のため、5000万円の評価が得られなかったのです。担保能力が無いケースでの融資は、当時では考えられないことでした。しかし、「国土の半分が中山間地域という日本で、農業をやろうという人を応援しなくて、いったい誰に農業をやってもらうのですか」と強く訴えて、支店長の英断で融資が決定。念願の研究棟を改築をすることができました。
その際、税理士からの勧めもあり、個人経営から法人経営へと変更。有限会社新居バイオ花き研究所を設立。新居さんが代表取締役として、栽培・研究のみならず経営全般に責任を持ち、夫は副社長として営業や新品種の育種を担当するという形ができあがりました。
法人のメリット・デメリットなどを考慮し、当時は悩んだそうです。けれども「法人にしたことで視野が広がり、経理も明確になったので、結果的に良かった」と、新居さんは語っています。

研究棟改築後は、「洋らん」中心の開発だけでなく、「洋らん(シンビジウム)のメリクロン苗(*)や無菌発芽苗」、「イチゴや鳴門金時など野菜のウィルスフリー苗(ウィルスに感染していない苗)」など、お客様のニーズに応じて増やしてきました。また、種類の異なる苗を交配することで、病気に強く、花もきれいな新品種の開発にも取り組んでいます。

冷暖房完備の研究棟は、女性が中心です。作業は指先の器用さが必要なため、根気よく仕事ができる女性ばかりになっているそうです。また、地元の学生も研修生として受け入れ、卒業生も従業員として採用しています。さらに、従業員の知識向上のために、海外の教育研修への派遣や、社内研修を実施するなど、教育にも力を入れ、誰もが働きやすい環境作りに力を入れています。

研究すればするほど仕事が拡がる

バイオテクノロジーの分野はいろいろなニーズがあり、研究すればするほど、仕事が拡がります。農家にとっては、バイオ苗を導入すると目に見えて売上があがるので、バイオ苗は人気が高いのです。研究者はたくさんいますが、その中で新居さんが成功した大きな理由として、経営力があります。営業や人材育成のような「経営」は、誰にでもできることではありません。新居さんには経営者の資質があったからこそ、右肩上がりで売上が伸び、数々の賞を受けているのでしょう。1999年に「毎日農業記録賞特別賞」を受賞、その後も農林水産省優良認定農業者として表彰され、2005年には「徳島ニュービジネス支援賞優秀賞」を受賞しました。

「あまり先を考えすぎると不安で動けなくなるので、絶対いける!という感覚でやってきました。農林金融公庫の支店長や税理士が、不動産の有無よりも事業の内容を価値判断の基準としてくれたことには、今でも感謝の念でいっぱいです。熱意は必ず人を動かすと言うことを教訓として感じています」と新居さん。
30代、40代は子育て、家事、仕事などに追われて、どのように過ごしてきたかあまり覚えていないそうです。それほど多忙な毎日だったのです。時には、山ほどある洗濯ものをたたみながら、女性の社長はなかなか大変だな、と思ったこともありましたが、その大変さのお陰で、苦労の中で明るく生きる術を身に付けることができたそうです。

これまで決して順風満帆に来たわけではありません。しかし、『思いを強く持つ』ことによって、自分を助けてくれる誰かが必ず現れ、土壇場で救われる。という展開で、緊張の連続だったそうです。
「『思いを強く持つ』と言うのは、いつも良い方に考えるプラス思考でいる、ということです。『いつかきっと必ずよくなる。』と信じて、何事も明るく受けとめるようにしました。今後はさらにもっと違う分野で研究しながら、成長していきたい」と、抱負を語ってくださいました。

*メリクロン苗:植物の生長点をとり出して処理し、これを無菌培養したうえ切断、増殖し、発芽、発根させて苗をつくり上げる。親株と、形態、性質が同じものを大量生産できるため、最初は洋ラン分野で商業化がすすんだが、現在では多くの植物の増殖の手段として実用化されている。

会社概要

会社(団体)名 有限会社新居バイオ花き研究所 
URL http://nii-bio.jp
創業 1989年  
設立 1996年10月1日
業務内容 バイオ苗の委託生産、研究開発、資材等輸出入

(新居 洋子さんの場合)

起業のきっかけ、動機

夫が個人事業としておこなっていたバイオ苗生産の仕事を、規模拡大することになり、バイオの研究と経営は自分が、営業と育種は夫が、と分担することになりました

起業までに準備したこと

農林金融公庫からの融資を受け、培養室の建設資金を確保しました。

起業時に一番苦労したこと

担保もなく、資金をどうするかが一番苦労しました。中山間地域なので、農地山林合わせても、5000万円の評価を持つ不動産が無かったのです。担保能力が無いところに融資をすることは、当時考えられないことでしたが、支店長に「国土の半分が中山間地域という日本において、農業に熱心に取り組もうというやる気のある人を応援しなくて、いったい誰に農業をやってもらうのですか」と強く訴えて、支店長の英断で融資が決まりました。
また、苦労したとは言えないかもしれませんが、子育て、家事、仕事などに追われて、30代40代をどのように過ごしてきたかあまり覚えていません。それほど多忙な毎日で、時には、山ほどある洗濯ものをたたみながら、女性の社長はなかなか大変だなと思いました。でもこの大変さのお陰で、苦労の中に明るく生きる方法を見つけました。

だからうまく起業できた!…その一番の理由

農林金融公庫から5000万円の融資をうけられたことです。

起業時の環境(友人や家族の協力他)

家族が土地を担保にしてくれたり、地域の人達が協力してくれました。

最初のお客さんと営業方法

営業は夫が担当してくれました。
新聞や雑誌の掲載をみた方からの問い合わせに対応したり、“お客様の困り事なんでも相談受け付けます”と年に2〜3回、車で北海道から九州、鹿児島まで訪問したり、地道な営業活動をしてきました。その結果、顧客からの口コミも増え、信頼関係ができ、だんだんと顧客が増えていきました。

起業の際の重要ポイント

家族の協力が得られるかということと、資金調達です。

役に立った情報源や相談先

税理士と「徳島県農業会議」です。
農業会議とは、都道府県ごとに設定されており、農業委員会等に関する法律に基づく委員会法人で、優良農地の確保・有効利用の促進や、経営感覚に優れた農業経営者の養成、農業経営の法人化を推進するなど、"土地・人・経営"対策を中心とする構造政策の推進に取り組んでいます。また、有識者をアドバイザーに委嘱し、農業構造改善事業の普及推進など農業・農村の活性化に努めています。

開業資金

5000万円

活動拠点(事務所・店など)

居住地にある、研究所など。

起業時の管理体制の整備(税理士、弁護士、弁理士など)

税理士になんでも相談しました。

起業後の転機

取り扱い品目を増やしたことです。イチゴ、鳴門金時のほか、菊やパセリなどの注文も農家から舞い込んでくるので、多様なニーズにこたえられるように、地道に研究を進めていった事が、転機へとつながりました。

起業して自分が成長したと感じたこと

人との出会いに感謝できるようになりました。

起業を志す人への一言アドバイス

やろうと決めたなら、途中であきらめないことです。
今まで決して順風満帆に来たわけではありませんが、思いを強く持つことによって、自分を助けてくれる誰かが必ず現れて、土壇場で救われるというような展開で、緊張の連続でした。思いを強くと言うのは、つまりいつも良い方に考えるプラス思考でいると言うことです。 いつかきっと必ず良くなると信じて、何事も、明るく受けとめる考え方の技(わざ)です。

気分転換のしかた

ショッピング、旅行などの趣味。

その他伝えたいことなど

途中、困難が山積みになったとしても、絶対に最後まで諦めず、やり遂げる、という意志の強さが必要です。また、必ず成功するという希望的考えを持つこと、自分は運が良いと信じまわりに感謝すること、この3つが大切だと思います。


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