ピアニストだった坂東未来さんが手作り石けんを作り始めたのは、夫の肌荒れをなんとか軽減させたいという思いからでした。そこに藍を組み合わせ、その薬効成分を活かした数々の手作り石けんや商品が生まれてきました。
仕事の経験 |
結婚 | 子ども |
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生かさなかった | していた | いた |
ピアニストであり、海外留学や国際コンクール参加などを夢見て、真剣に修行すること十数年。その後、音楽はたくさんの人と音楽の素晴らしさを分かち合うことなのではないかと思い至り、母が主宰していたピアノ教室を引き継ぎ、喫茶店などでラウンジ演奏を行う。夫が極度の肌荒れだったことと、環境に良いことをしたいという想いが重なり、手作り石けんを作り始める。そして、藍との出会いが強みになり、現在に至る。一児の母。
年齢 | 西暦 | 主な活動 |
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27歳 | 2002年 |
結婚。夫の極度の肌荒れを解決するために様々な化粧品・薬品を試す。手作り石けんと出会い、肌の症状が緩和されたのをきっかけに自然素材について学ぶようになり、自分で石けん作りをするようになる |
28歳 | 2003年 | 長女出産。ベビー石けんを始め、生活の中で使う石けんはすべて手作り。実家の農園で育てている「藍」を配合した石けんが完成 |
29歳 | 2004年 | 「藍色工房」創業、ネットショップを立ち上げる |
30歳 | 2005年 | 「有限会社藍色工房」設立 |
31歳 | 2006年 | ドリームゲートビジネスプランコンテスト「大挑戦者祭」全国大会において四国代表として参加し、来場者の最多投票数を獲得し、「ドリームゲート大賞」受賞。商工会議所「全国女性会連合会」主催の「女性起業家大賞」において、「特別賞」受賞。香川県産品コンクールにおいて和三盆糖配合石けんが「優秀賞(非食品部門)」受賞 |
ピアニストでもありピアノ教室を開いていた坂東さんが手作り石けんに出会ったのには、2つのきっかけがありました。
1つは、老舗のギター職人さんの「良質な木が手に入らなくなってきたから、工房を閉める」という言葉。もう1つは、ご主人がひどい肌荒れで、なんとかしてあげたいという思いからでした。
人間の肌に良いものを作り、それが環境を守ることにもなればいいと考え、自分で手作り石けんを作るようになったのです。
里帰り出産のため徳島のご実家に帰省していた頃、藍の生命力や薬草としての効果を活かしたらどうかと思いついたのは、お母様でした。ご実家では、貴重なことで知られている“阿波藍”を栽培していたのです。そこから、坂東さんとお母様の協力体制で、植物油を使い藍を配合する試行錯誤の開発の上、きれいな「藍色」が再現された石けんが誕生しました。
娘さんのアトピーにも効果を実感した坂東さんは、まずはご主人と一緒にネットショップを立ち上げました。その翌年には法人化。そして、2006年ドリームゲートビジネスプランコンテスト「大挑戦者祭」でドリームゲート賞を受賞したことで、一気に知名度が高まりました。
藍は、染料としてだけでなく、薬効の部分にも陽を当てて、作る工程からいろいろな人の役にたつことができます。田舎の休耕田の新たな活用法を見出すことにもなり、地域活性化の一役を担うことが可能なのです。
また、徳島県内で活動をされている藍師さんは4名、そのうち契約している藍師さんは現在1名ですが、皆さん、重要無形文化財保持者としてご活躍されております。ただ、後継者問題もあって、藍師さんは今後数十年で技が途絶えるのではないかと、皆が心配しています。染料となる「すくも」の技術が途絶えても藍染めが途絶えることのないように、「すくも」を用いなくても染められる方法を研究しています。
「大勢の人が喜んで働ける場を作りたかった」と、坂東さんは明るく話してくださいました。
現在も、地域の素材と石けんの組み合わせや、雑貨、健康食品など、いろいろな試作品を作っている藍色工房。少しでも多くの人に、藍という素材を知ってもらい、抗菌効果などの薬効成分を活かし、アトピーの治療など副作用のない商品を生み出していきたいといいます。
さらに、環境問題をアカデミックに追及したりしなくても、この石けんを使うことで、多くの人に優しい生活が実現します。
「強い信念を持って、“何をしたいのか”“どうしてそうしたいのか”を、伝え続けていくことが大切です」とメッセージをいただきました。
会社(団体)名 | 有限会社藍色工房 |
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URL | http://aiironet.com |
創業 | 2004年7月13日 |
設立 | 2005年11月30日 |
業務内容 | 自然素材の化粧品・生活雑貨・健康食品などの企画製造販売 |
実家で栽培している「藍」に染料以外での用途で新たなマーケットを作ることができれば、田舎の休耕田の新たな活用法を見出すことにもなり、地域活性化の一役を担うことが可能と考えました。
また、夫婦で体験してきた肌への深い悩みとその解決方法を踏まえて、同じ悩みを持っている人たちに正しい情報を広めることも大事な役目と考えました。
薬事法の規制範囲を県の薬務課に問い合わせて確認。
夫が起業塾へ通い勉強を積み、ネットショップでの通信販売に必要な法的規制も合わせて確認。
子どもが0歳で目が離せない時期だったため、時間のやりくりに苦労しました。
睡眠時間2時間という日が半年ほど続き、体力と気力の維持が大変でした。
「阿波藍」を配合した手作り石鹸が他にはなく、全国初の商品でした。
また、藍を育てる農園の話題や私たちの肌の悩みで体験したことなど、他にはない話題を提供できました。
両方の両親が起業への思いを理解してくれました。
小さな子どもの面倒など協力的に助けてくれ、非常に励まされ、ありがたかったです。
インターネットでの受注で、県外の女性でした。
資金繰り。しばらくは利益が見込めないことを想定して、資金を調達しておかないと、本当にしたいことができるようになるまでに、もたなくなってしまいます。
県の中小企業支援財団など、公的な情報源や相談窓口。
確実な対応をしてくれるし、助成金など資金繰りに役立つ情報も漏れなくキャッチすることができます。
夫と立ち上げたため、貯金と両親の応援からスタートしました。
事務所(香川県)と藍染めの染め場のある農園(徳島県)。
起業時は、総務事務の経験のある夫に任せていました。
弁護士、弁理士については県を通じて「藍」の石鹸の製法に関する特許出願の折に紹介してもらいました。
ドリームゲートのプレゼンコンクールでの大賞受賞。
マスコミに工房の取り組みが取り上げられることが一挙に増え、それまでより知名度が上がりました。
起業前より広い視野で社会を見ることができるようになりました。
理解の無い批判や批評を恐れずに、強い信念を持って「何がしたいのか」「どうしてそうしたいのか」を、伝え続けてください。
ピアノ演奏。
売上は絶対に必要な大事なことですが、その数字を動かしているのは人の「心」です。
真心こめて、お客さまの役に立つことを、真剣にイメージすることをいつも忘れないようにしていれば、失敗をしてもどんどん良い方向へ向かっていきます。
心のこもった会社がたくさん育つ素敵な国になるように、みんなでがんばりましょう!!