中小企業をターゲットに絞り込み、1999年に中村税務会計事務所を開業。さらに2004年には経営計画専門のコンサルティング会社を立ち上げた中村里実さん。異業種からの転身を成功させたのは、強い興味と探究心でした。
仕事の経験 |
結婚 | 子ども |
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生かした | していた | いなかった |
近畿大学農学部農学科卒業後、サザン・イリノイ・ユニバーシティにて植物ホルモンを研究。在学中に帰国し、種苗会社の研究職に従事する。同大学修士課程修了後、米国各州の政府東京事務所へ勤務。マーケティングに携わる。 結婚後、義父が税理士だったことから経理に興味を持ち、簿記資格を取得。1995年に5科合格を果たす。複数の会計事務所を経て「中村税務会計事務所」を開設。2004年には、同事務所の経営計画コンサルティング専門部門となる「有限会社アシスト・アルファ」を設立した。中小企業の経営を多方面から専門家の目で総合的にサポートしている。
年齢 | 西暦 | 主な活動 |
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22歳 | 1982年 |
近畿大学農学部農学科卒、サザン・イリノイ・ユニバーシティへ留学 |
24歳 | 1984年 | 種苗会社の研究職に従事 |
25歳 | 1985年 | サザン・イリノイ・ユニバーシティ修士課程修了後、バージニア州政府東京事務所を経てミシガン州政府東京事務所へ勤務。マーケティングに携わる |
29歳 | 1989年 | 結婚 |
30歳 | 1990年 | 義父が税理士だったことから経理に興味を持ち、簿記資格を取得 |
31歳 | 1991年 | 専門学校へ通い、資格取得のため受験勉強に専念する |
34歳 | 1994年 | 複数の税理士事務所・公認会計士事務所に勤務 |
35歳 | 1995年 | 税理士試験5科合格 |
37歳 | 1997年 | 税理士登録 |
39歳 | 1999年 | 中村税務会計事務所開設 |
40歳 | 2000年 | 行政書士登録 |
44歳 | 2004年 | 中村税務会計事務所の経営計画コンサルティング部門となる有限会社アシスト・アルファ設立 |
大学で植物ホルモンを学び、そのままアメリカの留学先でも試験管のなかで植物を育てていたという中村さん。在学中に帰国した後も種苗会社へ就職し、研究職に従事しました。しかし同大学修士課程修了後は種苗会社を辞め、バージニア州政府東京事務所での業務を経て、ミシガン州の政府東京事務所でマーケティング関連の業務を担っていました。
そんな中村さんの転機は、結婚後に訪れます。税理士である義父の仕事を見ているうちに、経理に興味を持ちました。以前から興味を持ったことは追求しなければ気がすまない性格だった中村さんは、経理の勉強を始めました。その勉強を通じて、経理の面白さを体感したのでした。そしてすんなりと日商簿記の2級までを取得してしまいます。「これなら税理士もとれるかも」そう思い立ったのが、1990年のことでした。
しかしそこからが大変でした。仕事を辞め、専門学校に通って毎日毎日、1日12時間も勉強をし続けました。そして本格的に勉強を始めた1年目に財務諸評論の合格を皮切りに、4年間で5科目合格を果たします。
晴れて税理士となった中村さんは、公認会計事務所に勤務しました。会計事務所では深夜2時、3時まで残業することも少なくなく、大変だったと同時に、やりがいもある仕事でした。しかし顧客はほとんどが大手企業。たいてい社内に経理部門などもあり、税理士や弁護士など専門家を抱えているケースが多く、仕事も経理上のアドバイスをする必要がほとんどありません。記帳代行業務が中心となる日々を送っているうちに、やがて、「本当に税理士の知識が必要なのは、社内に専門家がいない中小企業ではないだろうか」という思いが芽生えました。中小企業向けのサービスをしたい。その思いが大きくなったとき、中村さんは独立を決意します。
税法上有利になるため、12月中の事務所開設に踏み切った中村さん。11月の末まで公認会計事務所で勤務していたため、準備期間はまったくなく、大急ぎで事務所を探し、備品を購入しなければなりませんでした。とはいえ、「新しいことにチャレンジし、新たな枠を自らの力で作り出すことが楽しかったので、さほど苦になりませんでしたね」と語ります。
家族の反対もなく、穏やかに見守ってくれているなか、中村さんの税務会計事務所所長としての日々が始まりました。
顧客ゼロの状態でスタートを切った中村さん。それでも特に大きな不安は感じなかったと言います。
「とにかくがんばることしか頭にありませんでした」と当時を振り返ります。
まず営業の第一歩として、昔からの知人に年賀状で事務所を設立したことを知らせ、時間があるときには異業種交流会へ積極的に参加することで、顔を広げていきました。やがて紹介から紹介へと徐々に顧客や、万が一のときに頼れる知人が増えていったのです。
「税理士の仕事は、ただ決算のお手伝いをするだけでなく、会社を黒字にし健全な運営ができるようアドバイスすること」
そう考えた中村さんは、営業の窓口を広げるためにも行政書士にも登録。順調に堅実に仕事を進めていった結果、やがて顧客から融資の相談なども受けるようになりました。融資を受けるために必須な決算書の作成は行っていたのですが、経営計画書があったほうがより有利に融資が受けることができます。しかし、税理士の仕事の範囲だけでは簡易なものしか作ることができません。
そこで中村さんは、税務管理だけでなく、より詳細な経営計画をたてて綿密なアドバイスができるよう「有限会社アシスト・アルファ」を2004年に設立。毎年変わる税法だけでなく会社法・民法など、さまざまな範囲の勉強を続け、企業の健全な経営をサポートすべく、日々活動しています。中小企業の健全な経営のために――そんな熱い思いが中村さんの多忙な日々を支えています。
会社(団体)名 | 中村税務会計事務所 |
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URL | http://nakamura-tax.com |
創業 | 1999年12月1日 |
業務内容 | 税理士、行政書士 |
税理士資格取得後の勤務先が公認会計士事務所でした。顧問先が外資系の大手企業ばかりで、基本業務が記帳代行という毎日のなかで、「すでに社内に専門家がいる大手よりも、本当に税理士としての知識が必要なのは中小企業なのではないか」という思いから、独立を決心しました。
開業したのは12月1日なのですが、実は11月いっぱいまで勤務をしていました。でも、その分準備をできたわけではなく、何もかもがゼロの状態でしたので、時間的に事務所の賃貸契約や事務所備品の購入などの準備が大変でした。
とにかく、ツテもなにもない状態でスタートしましたので、顧客開拓と資金のやりくりが大変でした。結局は自分の貯金をくずして資金をやりくりしました。
正直なところ、うまく独立できた例とは思えません。実際に準備もバタバタしましたし、独立した時点では顧客もゼロでした。本当はもっと、計画的にするべきでしたし、営業しておけばよかったなという反省点もあります。
仕事を辞めて税理士資格取得を目指したときと同じように、「独立する」と言っても家族の反応は、「ふーん」という感じでしたね。とにかくやりたいようにやらせてもらえたので、感謝しています。
ちょうど12月だったので、年賀状で開業のお知らせをしました。また、まずは自分が税理士をやっていることをたくさんの人に知らせるために人の集まるところに出る必要性を感じ、異業種交流会にも積極的に参加しました。紹介してもらうつもりで開業の連絡をすると、その社長さんが顧問先になってくださったり、その後、また別の人を紹介してくださったりを繰り返して、今に至っています。
紹介すること自体にも、やはり責任が伴うので勇気が必要です。それだけに、これまで自分自身が築き上げた信用が、何よりも重要ではないかと思います。
異業種交流会です。独立当初はかなり時間に余裕があったため、営業的な意味合いも兼ねていろいろな会合に顔を出すようになりました。それになにより、さまざまな業種の経営者の考えを知りたかったのです。何度も顔を出しているうちに親しくなった異業種交流会で知り合った方たちは、互いに安心感があるため、仕事の紹介をしあったり相談したりと、大変お世話になっています。それに今でも異業種交流会は、一種の息抜きとなっています。
税務会計事務所開設時点では100万円前後、有限会社アシスト・アルファ設立は、資本金300万円でした。
最初は狭いマンションの1室でスタートしました。そこから半年後に倍の広さのマンションへ移動し、3年後に現在の事務所に移転しました。考えればこれまで使用したすべての事務所が港区内であるという実績と信頼からか、アシスト・アルファ設立時の融資相談などもかなりスムーズにできたと思います。
税理士は自分自身ですので、自分の業務内でできることはすべて自分で行いました。それ以外の専門家に関しては異業種交流会で知り合った方などにお願いしました。弁護士さんには顧問契約書を作成していただきました。
大きな転機はありません。とにかく一番不景気なときに顧客ゼロの状態で開業したので、じっくり堅実に事業が成長している状態です。
なによりも責任感が強くなったと感じています。経営面でも、仕事に関しても、社員に関しても、とにかくなにをやるにしても、すべて自分に返ってきますから。
新しいものを作るということは、基本的には楽しい作業です。しかし継続することはやはり日々の積み重ねになります。いかに続けることができるかがカギになると思います。確かに大変ですが、好きな仕事ですし毎日が楽しいですよ。
テレビでニュースやドキュメント番組を見たり、パソコンをしたりなどが、なによりも気分転換です。