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女性の身体をケアするための複合施設

都道府県東京都 年代30代 業種癒し
 有限会社マザーズオフィス
[ 代表取締役 ]
宮川 明子 さん

自宅を解放した“おっぱいサロン”で、整体やアロマトリートメントからスタートした宮川明子さんの“癒し”事業は、女性の支持を得て、鍼灸治療室、助産院、アロマテラピー学校を併設した複合施設に。

起業したとき

仕事の経験
結婚
子ども
生かした していた いた

プロフィール

東京都出身。大学卒業後、自宅で母乳に悩む母親のための“おっぱいサロン”を開設。女性のための鍼灸治療とマッサージを行う「松が丘鍼灸指圧治療室」を開設し、アロマテラピーを試みる。有限会社マザーズオフィスとして法人化。日本にアロマテラピーの知識を正しく広めるために、自然療法スクールマザーズオフィス(「アロマテラピーの学校」など)を開校。社団法人日本アロマ環境協会理事。著書に『心と身体をケアするアロマテラピー』(日本文芸社)など。

起業年表

年齢 西暦 主な活動
21歳
1971年
大学在学中に結婚 
24歳 1974年 御茶ノ水女子大学卒業。長女出産。母乳で苦労する 
29歳 1979年 次女出産。母乳でまたもや苦労した 
34歳 1984年 3女出産と同時に離婚。おっぱいサロン設立 
36歳 1986年 松が丘鍼灸指圧治療室設立 
39歳 1989年 有限会社マザーズオフィス設立。「アロマテラピーの学校」開校 
45歳 1995年 松が丘助産院設立 
50歳 2000年 「アロマテラピーの学校」の通販部として有限会社アクアヴィーテ設立 
52歳 2002年 アロマテラピーサロン「アロマスフィア」設立 

起業ストーリー

治療室開業に、母子独立資金を利用

現在、宮川明子さんは、84坪の敷地に建つ一戸建に、鍼灸指圧治療室、助産院、アロマテラピー学校を構えて、産前産後の女性の体をケアする仕事に取り組んでいます。
もともと体が弱かったうえに、母乳が出なくて苦労した経験をもつ宮川明子さんが、某先生の“おっぱい治療”に出会ったのは、三女を出産した後でした。その治療は、マッサージと指圧によって乳腺を開き、母乳を出しやすくするだけでなく、体も元気になるもので、宮川さんは生まれ変わったように元気になったと言います。
「これをいろんな人に体験してもらわなくてはと、出張治療していた先生をわが家に招いて、“おっぱいサロン”を開いたんです」
また、宮川さんは、待ち時間を利用して、当時勉強中だった整体の経験を生かし、無償でお母さんたちの体をほぐしてあげていました。このとき喜ばれた経験が、現在の仕事に結びついていきます。
離婚して母子家庭ということもあり、早速、妹さんと将来的な仕事の構想を練り、自分は鍼灸師、妹さんは助産師の資格を取りに学校へ通います。そして、2年後マッサージ師の資格を取り、先輩の鍼灸師の協力も得て「松が丘鍼灸指圧治療室」をオープン。開業資金は、母子独立資金(*)を利用しました。
「母子独立資金が200万円。ボロボロのアパートを借りて、100万円くらいかけて自分たちで改装しました。月々2〜3万円の返済で済むんですから、明確なビジョンを持っている人は、こうした資金は利用したほうがいいです」

銀行決裁に結びついた綿密な事業計画

すでに、おっぱいサロンで人脈を築いていたこともあり、お客様も順調に増えていくなかで、思いついたアイデアは即実行。そのひとつが“香り”でした。
「赤ちゃんが生まれてきたときに、いい香りに包まれるのと、消毒液の匂いに包まれるのとでは大きな違いがあると思っていました。それで、助産師さんたちに付いていって、精油の香りをたいたり、アロマトリートメントをしたんです。治療室でもお母さんたちの評判がとても良かった」
まだ日本にアロマテラピーの情報が少なかったので、海外から本を取り寄せるなどして、お母さんたちも交えて勉強会を開催。しかし、勉強するうちに、解剖学など、もっと専門的な知識を得ていかなくてはいけないということがわかり、正式に「アロマテラピーの学校」を開校します。
それから6年後、宮川さんに大きな転機が訪れます。
「いずれは、助産師の勉強をしている妹と助産院をやろうということもあって、いろいろな縁があって、現在の物件が見つかったんです。広い敷地なので、ここなら、治療室もアロマテラピー学校も併設できると思いました。ただ、1億8000万円という高価格。いっしょにやろうとしていた仲間2人の貯金と合わせても、自己資金は600万円ほどだったので、銀行はまったく相手にしてくれませんでした」
しかし、ここで引き下がらなかった宮川さんは、別の信用金庫に、綿密な事業計画を出し、また、患者や知人から総額7000万円という借金をして、決裁に持ち込んだのです。
「事業計画書に雛形はありませんでした。経費や利益の算出と事業の見通しはもちろん、ここで事業を起こす理由、社会における必要性、複合的な事業のメリットなど、ありとあらゆる資料を添えて、レポートの厚さは10センチ以上でした」

大切なのは、明快なビジョン、人、そして人脈

こうして生まれたのが、女性の産前産後のケアを一同に集めた複合施設。ほかに類を見ないとあって、遠方からのお客様も数多く訪れています。
「助産師さんと、出産時のあり方を協力して考え、アロマテラピーや水中出産などを取り入れていきました。また、患者さんにどんどんアロマテラピーを実践して教え、経験を積んでいったのが良かったんだと思います」
松が丘助産院を始めてから3年目には、妹さんが助産師として就任。ようやく助産院を妹さんに引き継ぐことができ、2006年の5月には、経営も独立しました。助産師はフリーの人も多く、一人ひとりの経理的管理がかなり大変なのだそうで、こうした業務が手離れしたことで、ずいぶん楽になったのだとか。
「たくさん稼いでいるなんて言われますけど、内情は大変でした。でも、やっとこの3〜4年くらいで、会社から給料が払える状態になったので、このままの業績でいけば、いずれは借金もなんとかなるでしょう」
鍼灸師、アロマセラピストなどは資格があれば始められ、資金力があればサロンを開くことも可能ですが、大切なのは「明確なビジョンと、人そのもの、そして人脈」と宮川さんは語ってくれました。

*母子独立資金…現在、東京都にあるのは「母子家庭のための貸付金」。母子家庭の方々が、経済的に自立して、安定した生活を送ることができるように、必要な資金の貸付けを行っている。事業開始資金なども含まれる。

会社概要

会社(団体)名 有限会社マザーズオフィス
URL http://www.aroma.gr.jp
創業 1986年12月15日
設立 1989年
業務内容 スクール運営、店舗サロン経営

(宮川 明子さんの場合)

起業のきっかけ、動機

離婚をしたこともあって働かなくてはいけませんでしたが、意義のある仕事をしたいと思っていました。
3人目の子どもが生まれて、母乳の味によって子どもの機嫌が良かったり、悪かったりするということに初めて出会いました。母乳の治療をして身体の弱かった私が元気になったことが、母子関係を専門にカウンセラーなどをしていた私には目からうろこのような感じがしました。女性の身体にかかわることがしたい。周産期のすごし方で、女性は若く美しくなるし、子どもは健やかに育つということで、“おっぱいおばさん”になろうと思いました。そして、助産院を開こうと思いました。

起業までに準備したこと

鍼灸学校に通い、身体を診る資格を取りました。自宅に母乳のマッサージの方を招いて、おっぱいサロンにして、先生のやり方を見て覚え、また、おかあさんたちとのコミュニケーションの輪を広げていきました。

起業時に一番苦労したこと

鍼灸の資格を取るまでは、広告宣伝などは私がおこない、治療は先生方にやってもらいました。収入はすべて先生に差し上げていたので、収入の道としてやっていた学習塾と子育て、学生としての学業と見習いの身としての修行で寝る時間がありませんでした。

だからうまく起業できた!…その一番の理由

はじめにネットワークを広げていたことだと思います。

起業時の環境(友人や家族の協力他)

妹と同居していたので一緒に子育てができ、同じ目的を持って妹は助産師を目指していました。鍼灸学校の同級生と一緒に開業することになり、いろいろ助けてもらいました。

最初のお客さんと営業方法

おっぱいサロンのお客様からの口コミです。

起業の際の重要ポイント

自分の目指すものをはっきりと打ち出し、同意してくれる方をお客様にしていくことです。

役に立った情報源や相談先

自然育児相談所、山西先生。

開業資金

200万円。母子独立資金を区から借りました。

活動拠点(事務所・店など)

治療室。

起業時の管理体制の整備(税理士、弁護士、弁理士など)

友達の税理士さんに相談にのってもらいました。

起業後の転機

今の会社の建物が見つかったとき、貯金もほとんどありませんでしたが、助産院と治療室、アロマテラピーの学校を一緒にやる場所として最高だと思えたので、患者さん達にお金を貸していただき、銀行を説得して、約2億円のお金をかり、買うことができました。後は、返済のために必死で働きました。

起業して自分が成長したと感じたこと

専業主婦だった社会を知らなかった私が、銀行を相手に、事業計画を出して納得させるようになったことは大きなことだったと思います。

起業を志す人への一言アドバイス

自分のヴィジョンをはっきりさせ、自分が得意なことを極めて、特徴を出していくサロンづくりをするといいです。自分の仲間を増やしていくことが大切だと思います。

気分転換のしかた

気分転換をのことを、あまり考えたことはありませんでした。

その他伝えたいことなど

患者さんたちが支えてくださったおかげで、今の会社があるということをいつも忘れずにいたいと思います。

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