お子さんのアレルギーと住宅の関係を調べ、また同じような問題で悩んでいる人の話を聞いていた山田慶子さんでしたが、今ある住宅では解決にならないと感じ、なければ自分でつくろうと決意、開業へと導かれました。
仕事の経験 |
結婚 | 子ども |
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生かした | していた | いた |
建築系専門学校卒業後、リフォーム会社に勤務。結婚後出産した長男、長女がアレルギー体質で通院生活が続く。このとき知り合ったたくさんのアレルギー体質の人たちとの出会いもあり、住宅分野で対策がないか調べ始める。2004年に自然素材を使った家造りを提案する「なちゅらる設計工房」設立。その後も精力的に資格を取り、現在は新築設計業務も開始。
年齢 | 西暦 | 主な活動 |
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20歳 | 1988年 |
建築系の専門学校を卒業、設備設計会社に就職 |
21歳 | 1989年 | 2級建築士免許、キッチンスペシャリスト資格取得 |
24歳 | 1993年 | 結婚、退職 |
25歳 | 1994年 | 第1子出産 |
28歳 | 1997年 | 第1子がアレルギー体質であることが判明。通院が続く |
33歳 | 2001年 | 第2子出産。この子も後にアレルギー体質であることが判明。多くのアレルギー体質の人と出会いから住宅のことを調査する |
36歳 | 2004年 | なちゅらる設計工房設立。自然素材でのリフォーム専門設計事務所として活動。A.F.T.認定一級色彩コーディネーター資格取得 |
37歳 | 2005年 | 自然素材のモデルハウスとして自宅を新築 |
38歳 | 2006年 | 自然素材でローコストな住宅を実現させようと(株)ハーフビルドサービスと代理店契約を締結、新築設計業務開始。第3子出産。泰山流四柱推命学鑑定士免許取得。カラーセラピスト資格取得 |
山田さんのお子さんはそれぞれにアレルギーを抱えています。息子さんは初めて予防注射をした後、高熱と発疹が出て、以来、予防接種は打てません。アレルギー性の結膜炎や鼻炎もあります。その後生まれた娘さんにも鼻炎や皮膚炎がおこり、直接床やカーペットに触ると皮膚がぼろぼろになってしまうそうです。山田さん自身にもアレルギーがあるため親子で病院のはしごが続くような日々でした。通院しているとそこで同じような症状に悩む人たちにたくさん出会います。こんなに困っている人がいて、しかもシックハウスが一つの原因なら、何か対策はないものかと山田さんは調べ始めました。自分が納得いくまでは気が済まない性格、本や資料をむさぼるように読んだと言います。そのうちに自分で自然素材で家をリフォームしたいと考えるようになりました。
自然素材を扱う業者を訪ね、本物にこだわる生産者との出会いがあり、この素材なら安心と思う商材が集まりだしました。こうして2004年に設計士として嘘のない住まい作りを目指すことを目標に、自然素材でのリフォーム専門設計事務所「なちゅらる設計工房」を設立したのです。事務所にはアレルギー疾患、化学物質過敏症、うつ病などの疾患を持った方もきます。山田さんがいつもはがゆいと感じるのは、高いお金を出して家を作ってしまった後、相談にこられても手のほどこしようがないケースが多々あるということです。対処策は考えられますが、建てる前にきていただければ、と思うそうです。建築する前に山田さんに相談するには、「なちゅらる設計工房」の存在が知られていなくてはなりません。これまで宣伝はほとんどせず、口コミで顧客が増えていきました。口コミは成約率も高く、事業としてはありがたいことですが、幅広く山田さんの活動が知られるためには告知の必要性もあると最近は痛感しているそうです。「本を一冊書いてみたいと思っています。家を建てる前に見ていただければ」と山田さんは言います。
地相鑑定のための四柱推命鑑定士の免許、色彩コーディネーター資格、カラーセラピスト資格なども取得している山田さん。多忙な中いつ勉強しているのかと不思議ですが、新しい勉強をすることが一番リラックスできるストレス解消法なのだそうです。事務所に来られたお客さんたちもなかなか帰りたがらないのだとか。山田さんがあまりにパワフルなので元気をわけてもらいにくるのだそうです。
最近の活動としては取得した資格を生かして、家相相談や風水カラー相談、インテリアコーディネート相談、主婦の目からみた間取り相談なども好評です。自分と同じような仕事をする人のためにスクールも開講しようと計画中です。中でもいま一番関心を持っていることは、心に病を持つ人や発達障害のある子どもたちのための空間作りです。そのような人たちのために自分のような設計士が一人くらいいてもいいのではと日夜研究、勉強に励んでいる最中。これからも山田さんはまだまだ走り続けていくようです。
会社(団体)名 | なちゅらる設計工房 |
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URL | http://www.epiphanie.jp |
創業 | 2004年1月 |
業務内容 | 住宅、ならびに店舗の新築及びリフォーム設計、工事管理、インテリアコーディネート業務全般、家相鑑定、間取り相談などの相談業務 |
自分の子どもがアレルギー体質で同様の悩みを持つ親御さんから、住まいに関する様々な相談を聞きました。建築士の立場から調べてみると、自然素材をうたい文句にしている企業からは納得のいける回答が得られませんでした。これほど悩んでいる人が多いなら自分でやってみよう、自分の子どもだけでなく皆さんにも貢献できればいいなという思いから起業しました。
起業に関する本を読み漁りました。起業家サークルにも相談に行き先輩の起業家から色々アドバイスを頂きました。
特に自然素材といわれる建材を徹底的に自分で調べまわり、自分の目で確かめ納得できるまで業者等に質問をしました。そうしているうちに本物志向の生産者と出会え「本当にいい素材」だけを集めることができました。
宣伝費がなかったことです。資本金は無く、事務所も持てず、主婦で子育てもあり時間の制約がかなりありました。また、無名なため仕事の依頼がなかなかなくアルバイトをしながら続けていました。
「宣伝をしなかった!」こと。これが幸いし、口コミだけでお客様や相談が増えていったのです。
仕事が無くて苦しい時期、妥協して他の仕事もしたほうがいいとも言われたのですが、自然素材を使った母親の視点から設計をする、という意志を貫きました。他社との差別化を徹底し、その旨をお客様に丁寧に説明する事で競合することが無くなりました。
多くの友人、子どもたちのアレルギーの通院で知り合った友人たちが、心配して口コミで宣伝してくれた。チラシを撒くよりも信頼感があり、成約率も高く助けてもらいました。既存客のみなさんにも紹介や宣伝してもらえたのは本当に幸運でした。
家族は家事や子育てを積極的に助けてくれたし、恵まれていたと思います。
口コミからの紹介。今も90パーセントが口コミからの紹介なので、チラシは撒いたことがありません。
自分の信念を貫くことです。最初から問題もなくいくことなど、まずありません。
うまくいかないときにお金儲けのほうに安易に流れてしまうと、結局人まねにしかならず他社との差別化も出来ません。最初は大変ですが、自分にしか出来ないオンリーワンを探す事が大事かと思います。
使用したい建材や素材について丁寧に教えてくれた生産者、業者さんたち。
彼らが本気で作り、技術についても熱心に教えてくれたから、自信をもって提供できる材料が揃えられたと思います。生の声を聞かせてくださったお客さまたち。この「本物の声」と「情熱」が私を支え導いてくれたのです。
100万円(アルバイトでこつこつ貯めました)
以前は事務所が中心でしたが、現在は多忙なため自宅と現場の往復が多くなりました。そのため自宅にも事務所を作りました。
最初は相談費用もなく申告なども自分でしていました。
先輩起業家から、お金の流れ、税金の申告に関しては、自分で役所や専門家に相談したほうがよいとアドバイスされました。
最初は自然素材でのリフォームだけでしたが、新築も手がけるようになりました。
もっと良い家を創りたい、喜んでもらいたいと思う気持ちから資格取得にも励みだしました。
起業前より起業後の方が多忙ですが、かえって試験勉強ははかどり、おかげで欲しいと思う資格が取れました。家事や子育てを言い訳や逃げ道にしなかったのが良かったのかもしれません。
勤めていた時は与えられた仕事をこなすだけでしたが、今は自分が全てを考えるようになりました。
どうしたらお客さまに喜んでもらえるのか、何をすれば紹介がくるのかなど、ありとあらゆる事に対して常にアンテナを張って考えるようになりました。
格段に視野は広くなったと思います。
ブームの仕事は起業もしやすいが、当然ながら同業者も多いものです。
成功している人には必ず他の人にはない秘訣があるはずですから、それを観察し参考にするといいと思います。
毎日が勉強の繰り返しで、自分自身を進化させ続けようとする姿勢を常に維持しないと生き残れません。新しいものを生み出していくには努力が全て、天才などいません。やるなら石の上にも3年の覚悟が必要です。
自分が関心のあることが書いてある本を何冊も読みます。
変わっているといわれますが、私は好きな事を勉強している時が一番幸せでリラックスできます。
最終的にはそれが新しいアイデアや閃きにつながっていくので、全てが自己の昇華につながると信じとにかく勉強します。
最近はカラーセラピーの勉強がストレス解消法です。
人には生きている限り良い時と悪い時があります。
起業は簡単ではないですが、あきらめずに努力し続ければ、道はそれなりに開けてくると思います。
私の場合、子どもがアレルギー体質だったことは大変でつらい時期でしたが、そのことによって自分自身が最も生かされる場を与えられるきっかけとなりました。
現在は、心に病を持つ人や発達障害がある子どもたちのための空間づくりを研究、実践中です。
発達障害の子どもは、一般の人たちに比べてコミュニケーション能力が劣っていたり、また五感も敏感であることなどから、今大きな社会問題となっているいじめの被害者にもなりやすいのです。
このような子どもたちが安心できる環境づくりを進めていく手助けをしていきたいと願っています。
そのためには勉強し、建築士としての仕事にどんどん反映させていきたいと思っています。
夢は発達障害を持つ子どもを支援できる学校を創り、そこで自分も奉仕活動をすることです。