飼っていたペットが亡くなり、火葬の手段がなく困った経験からニーズがあるのでは?と起業の意志を固めていった三浦弥生さん。もとはとても慎重派でまさか自分が起業するとは、と思っていたそうです。
仕事の経験 |
結婚 | 子ども |
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生かさなかった | していた | いた |
会社勤務を経て、青森に帰省後、結婚。ペットとして犬と猫を飼っていたが、相次いで亡くし、火葬に困った経験を持つ。そのことがきっかけで同じような思いをしているひとのために何かできないかと思い立ち女性起業セミナーを受講、このセミナーが大きな転機となりその後ペットの訪問火葬、ペットシッター「ペコたま」を設立する。野良猫の世話や責任あるペットの飼い方など啓蒙するNPO法人アニマル・サポート青森の代表理事も務める。
年齢 | 西暦 | 主な活動 |
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18歳 | 1972年 |
工業高校卒業後竹中工務店東京支店勤務 |
21歳 | 1975年 | 帰省後、結婚。専業主婦 |
24歳 | 1978年 | 夫の設計事務所開業に伴い、専従者として手伝う |
27歳 | 1981年 | 犬を飼い始める |
30歳 | 1985年 | 猫を飼い始める |
45歳 | 1999年 | 青森市・青森県の女性起業支援セミナーを受講 |
46歳 | 2000年 | 起業家セミナー受講 |
47歳 | 2001年 | 愛玩動物飼養管理士2級取得 |
48歳 | 2002年 | 起業家支援セミナー受講。愛玩動物飼養管理士1級取得。ペット出張サービス「ペコたま」開業 |
50歳 | 2004年 | NPO法人アニマル・サポート青森を設立。代表理事に就任 |
青森で夫の事務所を手伝っていた三浦さん、大事にしていたペットの犬と猫を相次いで亡くしました。市役所の火葬に申し込みましたが順番待ちで1週間も待たされるとの連絡が。つてを頼ってなんとか火葬できましたが、途方に暮れてしまったと言います。その時に、他にも似たような経験をしている人は多いのではないだろうかと考えました。ペットに関する本を読んでいて移動火葬車のことを知り、こういうものがあればいいのに、とも思いましたが起業しようとまでは結びつきませんでした。
元々よく考えてからでないと行動しない慎重なタイプの三浦さんがどのようにして起業へ踏み切ったのでしょう。
1999年、三浦さんは行政が主催した女性起業支援セミナーを受けます。このセミナーが人生の転機になったといえます。セミナーでは毎回宿題が出され、事業計画や経営、資金調達についてなどを調べなくてはなりません。この宿題をこなしていくうちに、もしかしたら自分でも起業できるのではないかという目算がついていったのです。
女性対象のセミナーでは大半の受講者がレストラン経営やお花屋さんなどどちらかといえば女性的な職業を希望していました。その中で三浦さんの訪問火葬という職種は異色だったそうです。そんなときセミナー講師から前に呼ばれて「三浦さんのやろうとしている仕事には愛情が感じられる、とてもいいと思います」と言われたのでした。家族からも、その仕事はとてもいい、と励まされました。「タウンページの広告に申し込んでしまったこともあとには引けなくなった理由の一つでした」と三浦さんは笑いますが、これまでにない職種への着眼点は周囲の人にも説得力があったといえるでしょう。このような後押しもあり、慎重派の三浦さんは起業への自信を徐々につけていきました。
こうして訪問火葬とペットシッターを開業しました。当時は仕事もあまりなく、このゆっくりしたスタートが逆によかった、と三浦さんは振り返ります。もし初めから忙しかったら自分の気持ちが追いつかず、続けられなかっただろうと言います。その後、地元の新聞に取り上げられ、また、テレビ番組で紹介されてから仕事が増えていきました。
生きものが相手なので時には何件か仕事が重なることもあります。訪問火葬の場合、昼間働いている飼い主さんのお宅へいくのは夜遅くからのことも。でも、できるだけ飼い主さんの要望に応えて引き受けたいとしています。飼い主さんの前で火葬するのですが、助かった、気持ちが楽になったと言われることが多いそうです。この「ありがとう」とお客さんから言われること、それが仕事への原動力になっています。
三浦さんから皆さんに一言アドバイスをいただきました。「自分が困っていることは他の人もきっと困っていること、そういうものを見つけて仕事につなげていけばいいのではないでしょうか。すき間産業なので大もうけはできませんが、私はお客さんの役に立つことが仕事の意義だと思っています。その気持ちを持ってくことが事業の長続きの秘訣なのでないでしょうか」
会社(団体)名 | ペコたま |
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URL | http://www.pekotama.com/ |
創業 | 2002年5月1日 |
業務内容 | ペット訪問火葬、ペットシッター |
実の父と義理の父を続けて亡くし、儀式的な通夜や葬儀より火葬の大切さを感じていた時、今度は飼っている犬猫を相次いで亡くしました。すぐに火葬したいと思ったのですが行政の火葬は順番待ちでなかなか空きが出ず途方に暮れてしまいました。ペットも家族同様に火葬したいと考えている飼い主さんがほかにもいるだろう、そういう方々のお役に立てる仕事がしたいと開業を考えました。
ペットに関する仕事に就くなら動物のことを知った方がいいと考え、愛玩動物飼養管理士の資格を通信教育で取得しました。また、女性のための起業セミナーを受講しました。
移動火葬車について関東方面の同業者に問い合わせたのですがあまり教えてもらえず、情報を得るのに苦労しました。その後、東京で自動車関係の会社をしている兄に相談して解決することができました。
3人の子どもが成人していたことが一番だと思います。
勤務の時間が不規則で食事の支度などできないことも多いのですが、大人ばかりなのでどうにかなります。
息子、娘がインターネットのことなど協力してくれました。
タウンページの広告、口コミ。
事業計画を何度も見直し、自分の起業動機をしっかり固めることです。
女性起業セミナーや商工会議所の相談がとても役に立ちました。セミナーで毎回出される課題をこなしていくことで、起業への自信や経営の見込みがついていったと思います。
800万円。
自宅近くの実家の一部屋を借りて事務所にしています。
起業セミナーの講師が税理士で何度も相談にのってくれました。
地元新聞社の記事で紹介されてから仕事が増えました。また起業セミナーを受講していたことからテレビ取材も受け、宣伝になりました。
仕事で知り合った飼い主と、それまで一緒に動物のボランティアをしていた人たちで動物のボランティア団体、NPO法人アニマル・サポート青森を設立したことです。
もともとは慎重な性質で、すぐに動く方ではなかったのですが、いろいろなことに興味をもつようになり、行動的になったと思います。また、取材を受けたり講師の依頼があったりで度胸がつきました。
起業したら後戻りはできません、進んでいくだけです。でも起業動機がしっかりしていれば大丈夫、がんばれます。
ぬいぐるみ作り。息子のお嫁さんの家がリンゴ農家で、時々手伝いにいくのですがこれがリフレッシュにとても効くのです。上を見てする作業が多いため、空を見ながら働くことがとても気持ちがいいのです。
起業する前はああしようこうしようといろいろ考えますが、起業してみてその通りには行かないことの方が多いです。起業してからどのように対応していくのか、それが大切だと思います。