今、NOCはどういう組織ですか?
株式会社ではなく、NPOです。
会員制で、約80社の企業が参画しています。
約80社というのは、どういう企業ですか?
基本的には、オーガニックコットン事業に携わるところですね。
原料輸入会社をはじめとして、メーカー、卸、店舗、ネット販売、コンサルなど多彩です。
みなさん、NOCの趣旨に賛同してメンバーになってくれたわけです。
その趣旨を簡単に話してくれますか。
一言で言うと、本物のオーガニックコットンを普及させようということです。
そのために認定基準を取り決めたり、認定マークを発行して商品に付与したり、
商品を共同開発したり、展示会に出店したり、生産地の視察をしたり、
執筆や講演などの啓蒙活動を行ったりと、いろいろやってます。
活動実績でわかりやすい事例を2,3紹介してください。
例えば、百貨店協会発行の販売員向けハンドブックには、
オーガニックコットン取り扱いに関する指導要領として、
NOC認定ラベルが明記されています。
全国の百貨店がNOCのラベルを認めたということです。
商品開発の事例では、オーガニックコットンのパジャマがわかりやすいかな、、、
某大手カタログ会社に納入していますが、10年以上のロングセラーで、
毎年トップランキングに入っている人気商品です。
一着1万数千円ですが、そのカタログに掲載すると数千着の注文があります。
カタログでの商品説明が、なかなか親切で上手いんだな、、、
オーガニックコットンの良さが伝わってくるので、見たり触ったりしなくても
買ってくれるんだね。
オーガニックコットンならではという特殊な市場に参入できた事例もあったね。
化学物質過敏症のことですね。
1998年に、北里研究所病院から電話があって、
「新しい医療施設内で使う寝具やタオルをテストしたいので、何点かオーガニックコットン製品を
送ってくれないか」と頼まれた。
それで、タオルや毛布や枕などをそろえて送ったんです。
2週間ほどすると、また電話があって、急いで話をしたいと言う。
会うと、こんな話だった。
「最近、アメリカやドイツ、日本でも、化学物質過敏症という新しい病気の患者さんが急増している。
テキサス州ダラスとドイツのバード・エムスタールには、そのための専門病院ができた。
日本では、北里研究所内に、世界で3番目の専門施設をつくった。
アレルギー科臨床環境医学センターという名前だ。
常に空気清浄機が働いているクリーンルームを備え、床は石材、壁はしっくいを使い、
化学物質が揮発されないようになっている。
ところが、寝具やタオル、床マットなどから化学物質が揮発したため、
施設がオープンできない事態になった。」
そこで、NOCに白羽の矢が立った。
NOCのオーガニックコットン製品の各種化学物質の残留検査を行ったところ、
桁違いに良い結果が出た。
これなら、大丈夫だということになり、すべての繊維製品をNOCから納めることになった。
これは、想定外の市場だったね。
これを皮切りにして、国立相模原病院(現・独立行政法人国立病院機構相模原病院)臨床環境センター、
国立療養所南岡山病院(現・独立行政法人国立病院機構岡山医療センター)、
国立盛岡病院(現・独立行政法人国立病院機構盛岡病院)呼吸器・アレルギー科、
東京都と兵庫県にある労災病院の環境医療センターと、次々に納品していきました。
NOCが、100%純正のオーガニックコットン製品を追求した成果が、こういうところで評価されたんだね。
そうです。
当時、NOCが扱う製品だけが、化学物質過敏症の人たちが着たり使ったりできる繊維素材だった。
思いもよらなかった医療現場で役に立ったことが、その後のオーガニックコットン製品普及への
強い励みと自信につながったと思います。
そういうのは、オーガニックコットン事業の魅力のひとつですね。
宮嵜さんなりの、オーガニックコットン事業の魅力とはなにか、を語ってもらえますか。
まず、オーガニックコットンが本物の素材だということですね。
本物の素材だからこそ、本物の商品をつくることができる。
化学物質過敏症の臨床施設にオーガニックコットン製品を納品してからは、
化学物質に関する勉強をすればするほど、その深刻さが身にしみます。
以前から、農薬や抗生物質の害についてはよく知られていましたね。
例えば、茶畑では、一番茶は虫が出てくる前に収穫する。
だから、殺虫剤を撒かない。
それは、特別な商品として扱ったり、自家用にしたりする。
それ以降、啓蟄のころ、暖かくなり虫がつきはじめると農薬を撒く。
これは、一般販売用として流通する。
それから、うなぎや魚の養殖もそうですね。
抗生物質とかいろんな薬品を与えて、魚が病気にならないよう、外見上きれいに見えるよう飼育する。
業者たちは、身体に悪いことは知っているので、自分では食べないんです。
テレビのドキュメンタリーだったかな、漁師さんも「おれたちは、あんなものを食べない」
とはっきり言っていたな。
合成繊維は言うまでも無いけど、通常の綿も化学処理が多いので、肌着で着ると、
肌がかぶれる人は少なくないと言うね。
アトピーのこともあって、赤ちゃんの肌着は特に気をつけたほうがいい。
一般の通常綿製品は、製造過程で、漂白、染色、柔軟剤、艶出し、など
何十種類という薬剤が添加されているからね。
最近、オーガニックコットン製の布ナプキンが人気なんだ。
一般のナプキンを使っていて体調がすぐれず、オーガニックコットンに変えたら
すっかり良くなって、おまけに長年辛かった腰痛が直ったという女性がいましたね。
これには驚いた。女性の身体の仕組みの深遠さですかね。
シックハウス症候群も増えた。
衣・食・住すべてが化学物質に汚染された環境になっている。
そういう中で、オーガニックコットンを使い始めると、気づきが生まれるね。
そうです。
それをきっかけにして、ライフスタイルすべてに気づきが広がっていく。
本物との出会いによって、はじめて偽物に気づく。
それまでのライフスタイルがおかしいと思い始める。
オーガニックコットンには、そういう働きがあると思っている。
それは、オーガニックコットンの魅力のひとつと言っていい。
いくらお金が儲かっても、自分が売っている商品が偽物だと感じていると、むなしいよ。
オーガニックコットンを扱っていると、後ろめたさがないね。
顧客に対しても、社会に対しても、自信が持てる。
お客さんからも生産者(綿農家)からも感謝してもらえる。
そういうところが、オーガニックコットン事業の魅力かな。
オーガニックコットンは、自身のライフスタイルへの気づきになる、、、
さらに踏みこむと、その気づきから、社会のありかたや世界へも目が向けられるようになる、、、
NOCの活動もそういう広がりかたをしているね。
おのずと、そういうところに導かれてきた。
オーガニックコットンの主要生産地は発展途上国です。
NOCのオーガニックコットンは、最初はカリフォルニアやテキサスの農場だったが、
徐々に、インドやペルー、トルコ、ブラジル、タンザニアなどの国にシフトしていった。
できるだけ、貧しい生産者を支援していこうという考え方になったから、、、
フェアトレードだね。
現地からは、相場以上の価格で買い上げることを積極的に進めている。
通常の綿花相場の約20%ぐらい高い値段で継続的に買っている。
作柄が良くても悪くても、とにかく買い続けるということが大事なんだ。
学校や井戸もつくっていたね。
NOCの会員企業として、現地からの輸入業務を一手に行っているのが、
パノコトレーディングという会社です。
ここと共同で、インドに学校をつくったり、タンザニアで井戸掘りをしたり、
医療バスを走らせたりと、いろいろやってます。
オーガニックコットンという<神さまからの贈りもの>を供給していただいている
という感謝の思いを込めて、やらせてもらっている。
オーガニックコットン事業の将来性については、どう考えていますか?