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起業レッスン096 : PFドラッカーの洞察力(7) : ドラッカーの<傍観者の時代>

起業レッスン096 : PFドラッカーの洞察力(7) : ドラッカーの<傍観者の時代>
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前回は、<ドラッカーというビジョン>について話しました。


1.ドラッカー博士の洞察力の秘密を示唆する、<すでに起こった未来><非顧客><予期せざる>という3つのキーワードに共通するものはなにか?

2.それは、一般の意識に反映されていないものだということだ、、、日常意識を通過して認知されなかったものたちの異名だ。

3.ドラッカー博士は、そのような通常は認知されえないものに言葉を与えて、認知されるものにした。

4.なぜ、博士にはそれが可能だったのか?

5.それを知るためには、ドラッカー博士の思考プロセスを逆にたどる必要がある。

6.それは、光に照らし出された森羅万象の世界から離れて、それらを照らし出している光源に向かう試みだ。

7.博士が見ているさまざまな光景ではなく、それらの光景を見ている博士の目に近づくこと。

8.そうすると、<すでに起こった未来><非顧客><予期せざる>などの言葉に共通する秘密が見えてくるだろう。

9.それは、ドラッカーという<ビジョン>であり、そのビジョンを、自分の内にも芽生えさせ育てられれば、彼の洞察力の幾分かを<私自身>も共有することができるはずだ。



ドラッカー博士の洞察力が生まれてくるところ、、、光源としてのドラッカー、、、つまり<ドラッカービジョン>にアプローチするためのヒントとなる文章が、ドラッカー博士の著書群のなかに散見されます。

それらをつなぎ合わせていくことで、ドラッカービジョンの輪郭が明らかになります。

特に、博士が自身のことを語っている文章には、そのための手がかりが隠されています。

そのひとつは、1979年に刊行された『傍観者の時代』(風間禎三郎訳)のプロローグにあります。

『傍観者の時代』は、ドラッカーの前半生を扱った内容です。

ドラッカーが過ごした世界について、また親しく交わった稀有な友人・知人について、半自叙伝的に語られています。

実は、出版当時、この本を読んだ時、私は、<傍観者(BYSTANDER)>という言葉にひっかかりました。

第二次大戦中に書き著した『産業人の未来』で<自由とは責任のことだ>と言っていた博士が、なぜ<傍観者>という無責任な立場に立つのか?という違和感があったのですね。

当時の読者の多くが同様の感想を持ったのではないかと想像します。


博士の言う<傍観者>とはなにか?

冒頭に、こんな言葉が記されています。

<傍観者には自己の歴史がない。傍観者は舞台の上に居るにはいるが、しかし役者ではない。傍観者は観客ですらない。傍観者は、舞台の袖に立って、役者や観客が気づかずに見過ごすものを見る。>

これは、不思議な文章ですね、、、何を言わんとしているのか、すぐには理解できません。

しかし、この言葉のひとつひとつを吟味していくうちに、ドラッカーの洞察力を生み出している秘密が、<ドラッカービジョン>が見えてくるのです。

それを、これからたどってみましょう。


まず、<傍観者には自己の歴史がない>とはどういう意味でしょうか?

傍観者としてのドラッカーには、彼自身の個人的な歴史など意味が無いということなのでしょうか、、、

また、<傍観者は役者でもなければ観客でもない>とも言っています。

本来は、あなたも私も、誰もが自分の人生の舞台では主役をはり、他人の人生の舞台では脇役を振られているはずですね、、、

この文章では、<傍観者>という在りかたは、そういう役柄をすべて逃れていると言いたいわけです。

また、自分や他人が演ずる舞台を楽しむはずの<観客>にさえなれないとも断言している。

つまり、<傍観者>は舞台を共有する存在ではないと言っているのです。

<傍観者>というのは、舞台の上の役者ではないし、観客席にもいない、、、舞台の袖に立って<見ている>存在である、、、

このように、博士の言う<傍観者>とは、この世で実際に生きている人間なのだろうかと、はじめの内は疑問に感じたものです。



(続く)



大久保忠男



** 以上は、2016年1月21日配信<起業レッスン>の再掲です *

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