起業レッスン093 : PFドラッカーの洞察力(4) : ドラッカーの非顧客の概念
起業レッスン093 : PFドラッカーの洞察力(4) : ドラッカーの非顧客の概念
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前回は、<ドラッカーの予言の数々>について話しました。
1.ドラッカー博士は、20代ですでに、ナチスの本質を見抜き、その勃興とその結果を予見していた。
2.日本の高度成長については、戦後まもないころに、博士だけが日本の経済的成功を確信していた。
3.ソ連の崩壊について予見した時は、Hキッシンジャーに酷評価されたが、まもなく予見どおりの現実になった。
4.<知識産業化社会>や<非営利組織(NPO)>についても、誰よりも早く、その本質と未来ビジョンを語っていた。
5.亡くなる前は、2030年ごろに輪郭が定まるという<ネクストソサエティ>と、その中核を担う<テクノロジスト>について素描した。
上記の予見のすべてが、<現在のなかにすでに起こった未来>を見ることによって洞察されたものだと、博士はいうのです。
では、なぜ、<現在のなかにすでに起こった未来>を、博士は見ることができたのか?
その<秘密>に通じるカギとなるもののひとつが、ドラッカーの独特なマーケティング概念である<非顧客>という言葉です。
マーケティング理論では<顧客>が最重要のキーワードです。
博士自身も、<顧客は誰か>とか<顧客の価値はなにか>などの<顧客の創造>のための定義や分析を多く行っています。
その一方で、彼は<非顧客>という言葉を使うのです。
おそらく、<非顧客>というような概念を明確な目的で用いたのは、博士がはじめてではないかと思います。
<非顧客>とはなにか?
流通業で言えば、3割の市場シェアを獲得すると、その企業は当該市場ナンバーワンのガリバー企業と言っていいでしょう。
しかし同時に、ガリバー企業と言えども、7割の市場が獲得できていないということを、それは意味しますね。
ガリバー企業といえども獲得できていない7割の市場、これが<非顧客>を表しています。
そして、決定的な変化は、市場の7割を占めるこの<非顧客>から起こると、彼は言うのです。
<非顧客>というような概念が、なぜドラッカーに生まれてきたのでしょうか?
マーケッターも経営者も営業担当も、<見込み客>になる可能性がなければ、<非顧客>など、だれも相手にしないものなのです。
<見込み客>につながらない<非顧客>というようなものは、実際的なマーケティングが取りあつかうことはありません。
なぜ、博士だけが、このようなところに注目したのか?
<非顧客>は、先述した<すでに起こった未来>とともに、予言者ドラッカーの秘密を共有していると言っていいでしょう。
(続く)
大久保忠男
** 以上は、2015年12月10日配信<起業レッスン>の再掲です *
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