起業レッスン029 : ミニ起業家物語 − 心を共有する
起業レッスン029 : ミニ起業家物語 − 心を共有する
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前回は、<起業家物語−たったひとりの顧客像>を話しました。
佐藤さんは、、、<顧客>と<市場>について、あらためて考えなおすことになりました。
<わたし>にとっての<顧客>とは、統計数字でも属性分析でもない、、、
たったひとりの顧客像の前に、わたしが、たったひとりで立っている、、、
その<ひとり>と<ひとり>との関係性が、とても神聖で大切なものではないのか、、、
そのような<ひとり>と<ひとり>をむすびつけてくれるものを、<わたし>のオリジナル商品にしたいと、佐藤さんは考えました。
例えば、遠く離れて都会に住む娘のために、心をこめて有機米を栽培する農家の父親のように、、、
【佐藤真美さんのミニ起業家物語−16】
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娘のために作った有機米は、父親の愛情のこもった宝のような作物だったろうと、佐藤さんは想像できた。
それだけでなく、稲作自体が、その労働自体が、父親の心の中で燦々と輝いていたのではないか、、、とも思えた。
「わたしのオリジナル商品も、、、そして、商品作りのプロセスも、仕事自体も、、、このような輝いたものにできないのか、、、一般市場向けの一般米のようではなく、娘のための有機米のように、、、」
そのような思いに満たされ、最初につくるオリジナル商品のイメージが佐藤さんの中でふくらんでいった。
佐藤さんの顧客は、出産前後のママ、特にマタニティだ。
たったひとりのママ(マタニティ)の前に立つ、たったひとりの自分を、佐藤さんは思い浮かべた。
その<ひとり>と<ひとり>との間をむすぶものが、最初のオリジナル商品だ。
佐藤さんは、女性とは言え、まだ結婚もしていないし、赤ちゃんもいない。
だが、ママの心を想像することはできる、、、
現実感に欠けるかもしれないが、日常の瑣末なことに煩わされないので、かえって純粋な想いを感じることができるかもしれない。
佐藤さんは、ようやく、自分自身が実感できる顧客調査に入れると感じた。
自分なりに、顧客調査の意味と目的を把握できたを思えたからだ。
具体的には、、、友人・知人のママたちに頼んだり、ママサークルを訪ねたりして、出産直後の話を聞き、ママの心の動きを、自分の心の中で追体験しようとすることになる。
商品に対するニーズを聞くのではない、商品に結びつく以前の心を共有すること、、、
明らかな形のニーズになる前の、生まれたばかりの心のやわらかな動きを、確かめることが大事なのだ。
この段階ではじめて、市場調査や顧客分析という手法が、現実的な意味を持ち始める。
佐藤さんが、顧客と自分との関係について、核心的なイメージと感覚を得られたからこそ、それらの手法や情報が生きてくるのだ。
反対に、そうした核心的な理解が得られる前に、教科書どおりの市場調査や顧客分析を行っても、それらの情報に振り回されるだけで、囲碁将棋の「下手の考え休むに似たり」に陥るだけであろう。
そういった手法や情報から、この核心的な理解にいたるという真逆の方向は難しいからである。
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(続きは次回へ)
大久保忠男
** 以上は、2014年3月27日配信<起業レッスン>の再掲です *
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