経理や簿記などと聞くと、「頭が痛い・・・」と感じる人も少なからずいるのではないでしょうか。なかには、「経理関係はすべて税理士や会計事務所にお任せだから、わからなくても大丈夫」という人もいるでしょう。
しかし経営者たるもの、会社の数字をつかんでおかなくてはなりません。また、会社を始めたばかりの頃は、経理も自分でやらなければならないかもしれません。
会社の数字を扱うのが、経理です。仮に専門家(税理士など)に任せるにしても、経営には経理知識は必ず必要になるので、しっかりと経理の基本を押さえておきましょう。
経理は会社のお金の流れを把握するためのものですが、単なる「計算業務」ではありません。経理には大きく3つの業務があります。
(1)経理業務
日々の経営活動の結果を帳簿に記録して、1年の終わりにはこれらの記録を集計して、会社の儲けや財産の内容を決算書などにまとめます。これを行なわないと、会社が儲かっているのか赤字なのか把握できません。
また、まとめられた決算書をもとに税務申告をするわけですから、決しておろそかにできない業務です。
(2)財務業務
儲かっているのに会社が倒産することがあります。俗にいう「黒字倒産」です。これは、入ってくるお金と出ていくお金のタイミングがずれることによって生じます。たとえば月末に支払いをしなければならないのに、売上代金は入金されていなくて、手元にお金がない、というようなケースです。
このような場合、経理上は売上が出ているけれど(つまり黒字になっている)、支払うお金がないために倒産するわけです。こうしたことが起きないように、会社の資金を調達し、運用をコントロールする業務も必要です。
このような、「資金繰り」の仕事も大切です。
(3)計画業務
経営環境の変化などを予測して、これまで記録してきた経理情報を分析し、今後の事業計画を立てる業務です。
起業したばかりでも、「将来、こういう会社になりたい!」というビジョンは必要です。そのとき、″お金″の裏づけがないと、単なる夢になってしまいます。たとえば、「5年後に年商100億円にする!」という計画を立てた場合、経理はさまざまなデータを分析し、目標を達成するための方策を考えます。
見方を変えると経理の仕事は、「これまでの取引を記録する」だけでなく、それによって「会社の将来像を組み立てる」という2つに分けることもできます。いずれにしても、単なる計算事務だけではないのだということだけは、覚えておいてください。
たとえば独立開業して、小さな会社だからと、いい加減な経理処理をしていると、会社の売上や支払いもきちんと把握できません。場合によっては、払わなくてもよい税金を払うことになるかもしれません。
そういう意味でも経理の役割は大きいのです。
少し角度を変えて見てみましょう。
これまで説明したように、経理の仕事は、単に計算をするだけではありません。いわば会社のコントロールタワーのようなものです。
ですから開業当初は、経理を人任せにせず、自分(あるいは家族)でやってみることです。
そうすることで、経営にどういうお金がかかり、お金がどういうふうに出たり入ったりするかを体で覚えることができます。
この「資金繰り」の仕事は、経営者にとって最も重要な仕事のひとつともいえます。経営は「ヒト・モノ・カネ」だといわれるように、お金のコントロールは経営者にとって大きな仕事なのです。
こうした経理の仕事は、毎日の業務、毎月の業務、年単位の業務の3つに分けられます。
(1)毎日の業務
現金・預金の出し入れや、商品の販売や仕入れ、交通費や給料の支払いなど、会社で発生するさまざまなお金やモノの出入りを、帳簿に記録していく作業です。
一般的には、取引が発生したら「伝票」に記入し、一定のルールにしたがって取引内容を分類します(これを「仕訳」といいます)。仕訳した取引は「総勘定元帳」という帳簿に転記します。
この作業には、簿記の知識が必要になりますが、簿記の知識がなくても、会計ソフトを使ってパソコンで日々の取引内容を打ち込んでいけば、自動的に帳簿づけをしてくれますから簡単です。
(2)毎月の業務
商品の販売や仕入れなど、比較的金額の大きいお金の出入りは、月単位で処理するのが一般的です。取引先に対して請求書を発行したり、取引先への支払い処理などを行ないます。また、従業員への給料の支払いも毎月の業務となります。
このほか、月に一度、会社の帳簿を締め切って合計と残高を計算する作業があります。帳簿を締め切ったら、全体の内容が一覧できる「試算表」をつくります。
(3)年単位の業務
年単位で行なう業務には、決算・納税、年末調整、予算策定などがあります。このうち、決算・納税が、最も重要な業務となります。